※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 Jr.ユース大会のレセプションの料理は、ビュッフェ形式で出された。 中学生には、ビュッフェ形式はそれこそ、宝の山のようなものだ。目の色が変わった者も少なくない。
「岬くん、は大丈夫そうだね」 ほっとした口調の三杉に、岬が怪訝な表情を返す。皿を眺められて、安堵される意味が分からない。 「・・何かあったの?」 「聞きたい?」 岬の相槌に、三杉は我が意を得たり、とばかりに話し始める。 「日向くんのお皿を見たまえ」 振り返った岬は、見てしまったことを後悔した。テーブルに山盛りの皿を置き、悦に入った表情で平らげている日向小次郎がいる。そして、せっせと皿を運ぶ東邦メンバー。 「何あれ?」 「ね?さっきはタッパーに詰めようとしていたから、阻止するのが大変だったよ」 フランスでタッパーに詰めてどうするんだろう?思わず浮かんだ疑問は、すぐに消えた。松山が駆け寄って来た為だ。 「岬、ここにいたのかよ」 「うん。松山、どうしたの?」 息を切らして駆け寄られるようなことはない。首を傾げた岬に、松山も笑顔を向ける。 「お前の分、確保したから」 ぎゅうぎゅうに詰められたタッパーに、岬は言葉を失う。松山は未だに岬が欠食児童のままだと思っているのだろうか? 「・・・それ、後で小次郎にあげてよ」 岬は足早に立ち去ると、日本チームの集まっているテーブルの側を通り過ぎようとした。 「岬さぁん」 泣き声めいた声を上げて、岬を呼び止めたのは新田である。佐野が次藤に皿を運び、タケシが日向に料理を貢いでいる中、早田に絡まれているらしい。 「早田くん、ワイン飲んだの?」 「はい。それで、どうしてたこ焼きがないのか怒ってるみたいっス」 「そんな飲んでへんて。キュッと一杯、ツマミも出さへんて、どないやねん」 この大声がナポレオン辺りに見つからなければ良いな、と岬は思った。 「チーズでも食べさせときなよ」 岬のアドバイスに、新田がそそくさと料理テーブルに走る。しかし、そこには石崎と滝・来生がスタンバイしていた。 「これは、若林さんに持って行く分だ」 「いくら若林でもそんなに食わねえだろ」 「若林さんはすげえ食うんだぞ」 皿を持ったままの新田に、じっと見られて、岬はため息をつく。三杉が疲れた顔をしていた訳だ。 「ほら、三人ともそんな所に溜まらない!」 若林の為にも、三人を散らして、交通整理をして。
岬がデザートの皿を手にしたのは、それからしばらく経ってからだった。 ピエールが自前のワインを勧めて来て離してくれなかったり、立花兄弟に米についての説明を求められたり。試練をくぐり抜けた岬が、ぐったりしたまま、バルコニーに出たところで、オレンジを盗まれた。 「若林くんっ!」 「しっ!」 大きな手が岬の口を塞ぎ、それから抱きすくめられる。極力一緒にならないようにしていたのに。若林自身も隠れていたのなら、避けていた意味がない。 「待ってたんだぜ」 「君こそ、修哲のみんなが探してたよ」 当然のように、皿の上のフルーツを摘み、後ろから覆いかぶさるように、抱く手を、払い除けようとする。だが、岬を抱く手はいつも通り力強くて、ちょっとやそっとでは揺るがない。 「あいつら、どんだけ食わせたら気が済むんだ」 こぼしながらも、抱く手を緩めようとしない若林を、岬は肩越しに睨みつける。 「君こそ、いつまで抱きついてるんだよ」 抗っても仕方ない、と岬は知っている。勝利の次には、愛を。岬の知る若林は貪欲な男だ。 でも、苦言を呈さずにはいられない。手のかかるチームメイト達が、すぐ側にいるのだ。 「好きなものを取りに来たんだ。何が悪い?」 若林は悪びれることなく、甘いフルーツよりも、もっと甘くてみずみずしい唇を貪った。夜目にも白い頬が、色を含んでいく。 「なあ、抜け出そうぜ」 耳元に、熱い吐息がかかる。いつのまにか、若林の腕を抱き返していた自分に気付き、岬は目を閉じる。いつでも、奪うのは若林で、奪われることを許すのは岬。
岬自身、頷いたのかどうかも分からぬまま、夜の闇の中にさらわれていった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。
実は今、用事で遠出しています。 今日は銀月星夢様とデートしてしまいました。サイトの雰囲気のままの、優しくてほんわかした素敵な方でした。 それなのに、源岬話をする時は情熱的で、二人が幸せなら良いと断言されたのも力強く、ついていきます!と思ったのでした。星夢様、ありがとうございました。また遊んでやって下さい。
お話ししていた時に、何故か思いついた話を書いてみました。まとまりはないのですが・・・。バイキングと掛けてみました。若林くんだけ、本来の意味の掠奪で。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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