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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
心の旅によせて
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
昨日の続きのような話です。



 三杉くん企画のカラオケ大会は成功裏に幕を下ろした。紅白戦で勝った方しか歌えないという条件も、戦意高揚には大いに役立った。監督の安眠妨害で、大目玉を喰らった(松山談)けれど、皆楽しめたみたいで良かった。

 でも、勝利チーム全員が歌うこともないと思う。

 僕は、子供の頃からあまり歌とは縁がなかった。家はたいていアパートだったし、父さんがいる時は音を出すのも憚られた。学校で習った歌を、川原でリフティングしながら歌ったりしたけど、流行りの歌は未だに分からない。

 だから、もし松山が近くにいなかったら、若林くんに押し付けていたと思う。自分が苦手なのもあるけれど、若林くんの歌も聞いてみたいと思った。

 若林くんの声は、数多い長所の一つだと思う。芯が通っているのに、優しくて甘くて、耳に残る。
 若林くんが歌うところもほとんど見たことがない。ドイツに渡ったばかりで、ボール拾いをさせられた頃、ゲームの音楽を口ずさみながら、思い切りふざけた、なんてエピソードは聞いたけど。
「ガキの頃、爺さんとカラオケしてたぜ。小遣いくれるから、演歌歌ったり」
なんて話も聞いたことがあった。でも、若林くんは僕の歌の方が聞きたいと断った。

 本当は、松山の顔を見て、思い出した歌があった。学校の音楽会で、担任の先生の好きだと言った歌を歌った。松山の家で、練習をした。
 松山に言われるまでもなく、思い出していた。でも、言えなかった。

 あの歌は僕の気持ちだ。

 立ち寄った土地で、仲良くなった友達や、好きになったものを、ポケットに詰めて持って行けたら。

 気がついたら、何度も口ずさんでいた。その度に、涙が止まらなくなった。

「覚えているよ」
あの時の気持ちも何もかも。でも、今の僕なら笑って歌える。そう思っていた。それなのに。

 乱入してきた若林くんや松山の歌を聞いていたら、泣いてしまいそうになった。

 カラオケからなし崩しに宴会じみている食堂を抜け出した後、若林くんの部屋で話した。
「俺はもっと岬の歌聞きたかったけどな」
若林くんが言った。とんでもない。僕は首を振って、若林くんの隣に腰を下ろした。
「若林くんもあの歌知ってたんだ」
「ああ」
若林くんが、懐かしいとも困ったとも取れない表情を浮かべる。

 修哲の遠征はたいていバスだったそうだ。そして、無理矢理マイクを調達して歌いまくる井沢や、完璧なハモりを披露する滝くん来生くん、何故かアイドル曲をフルコーラスで歌いあげる高杉くんに、車酔いしてぐったりいる森崎くん、というのが定番だったらしい。
「楽しそうだね」
「そうでもないぞ。毎回歌わされる身にもなれ」
そう反論してくる若林くんの声は、耳に心地好く響く。

「何か、今の俺の気持ちだと思った」
若林くんは手を伸ばして、僕の肩を抱き寄せた。優しく支える腕に、少しだけもたれる。
「お前を連れて帰りたくなった」
もうすぐ、別離の時が来る。心は繋がっていると思っていても、遠い距離に隔てられて、こんな風に寄り添うことも叶わなくなる。
「僕こそ、君をポケットに入れるのは至難の技だよ」
若林くんが笑う。タイムリミットは刻一刻と迫っている。
「岬、歌って」
若林くんに促されて、小さい声で歌った。歌う僕を包むように、若林くんが腕を伸ばした。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
源岬な曲って結構ありますが、(最近では「見守っていたい」の歌詞が良かったです)前の話そのままで。

二人とも、歌うまそうだと勝手に思っています。歌うイメージないけど。
何となく翼くんの歌はあまり聞きたくないです。逆に早苗ちゃんは天使の歌声で・・・というエピソードも作っていたのですが、入りませんでした。

あと、ポケットサイズ、でリンク先の那美様がミニ岬くんを描いていらっしゃるのを思い出したり。(可愛いです)

そして、どう考えても若林くんはポケットには入りません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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