※二次創作です。女性向表現をかすかに含みます。苦手な方はご注意下さい。
続きです。 昼休み、クラブの顧問に呼ばれた若林は面倒なのを耐えて、職員室に向かった。 南葛高校のサッカー部は全国有数のレベルである。翼と若林、二人の天才を擁し、国内では向かうところ敵なしだった。その一年生のプレッシャーに負けた二年生達が脱落した結果、三年から引き継ぎを受けた一年の若林がキャプテンを務めている。 放課後は貴重な練習時間である為、昼休みに岬くんを勧誘に行かないか、と翼から言われていた。それは冗談としても、もう一度あの人を見たい、という気持ちは起こりつつあった。 「見上先生、何ですか」 若林がぶっきらぼうに職員室のドアを開けると、入口側の見上の机に佇む人影に気付いた。 「あ」 岬太郎、と言いかけて、若林は慌てて口に蓋をした。幾ら旧知であっても年上は尊重するのが高校生。 「若林くん、今度転校してきた岬くんだ。全国を旅していたから大会に出たことはないんだが、うちのサッカー部に入りたいらしいんだよ」 見上の言いようも、現在サッカー部には一年生しか在籍していないことを考えれば、当然だった。いきなり選択を委ねられた若林は、岬をちらりと見た。 癖のないさらさらの髪は少し色素の薄くて、窓から差し込む光に透けそうに見えた。その髪の下の顔は更に繊細で、白い肌にきらきら輝く瞳が眩しい。およそ男子高校生に似つかわしくない表現で飾り立てられる相手を間近に見て、若林は柄にもなく、目のやり場に困った。そのくせ、目を逸らすこともできない。 「うちは入部テストがあるんだけど、良いですか」 入部テストを課せば周囲は反対すまい。実際のところ、若林と翼の二人の意志が一致していれば、反対できる猛者などいないサッカー部である。 「構いませんよ」 微笑むと更に昔のままの気がする。ほんのり甘い感情をもたらす笑顔そのものは覚えていないが、心に暖かい感情だけはしっかり覚えている若林だった。 「じゃあ、放課後に。サッカー部の部室は分かります?」 一歩近付いて更に気づいた。背は低くはないが、華奢な身体つきは中性的な顔と違和感がない。こんなのでサッカーしても大丈夫なのか、と見下ろす若林に、岬はまっすぐな姿勢のまま顔を持ち上げた。 「校内図見たから大丈夫です」 あまりまっすぐな視線に、若林は照れくさくなって目を合わせられなくなった。
昼休み、教室に戻ったところを翼に捕まった若林は、一部始終を話させられた。 「やっぱりサッカー部に来てくれるんだ」 そのまま踊りだしそうな翼に、若林は少し嫌な顔をして、それから翼に小声で耳打ちする。 「見上センの手前、入部テストって言っちまったんだが」 「大丈夫。ちゃんと俺が手加減するから。もしダメでもマネージャーとかしてほしいな、俺」 机の側に立ちながらスキップをするという妙技を見せる翼に、若林は頭を抱えた。いくら、10年来のライバルで親友で、同じ初恋を共有するとはいえ、こんな奴が仲間では先が思いやられる。 「で、どうだった?岬くん、近くで見て可愛かった?」 可愛かった、白かった、小さかった。白いうなじも振り返った時の表情も向けられた笑顔も、思い出したら真顔ではいられない。若林の表情からすべてを察したのか、翼がにんまり笑う。
(つづく)
翼さん、を書くのは苦手です。 とんでもなく賢くてとんでもなく抜けていると思うので、それを表現するのは難しい。
賢いと定評のある人は理屈をひねってもらっても問題ないし、 そうでない人はある程度直感で動いてもらっても良いんですけど、 翼さんは難しい。自分の手には負えません。 他のキャラだって書けていないのですが、苦手です。 それなのに、困った時の翼さん頼みをしてしまう自分が。 これも一つの黄金コンビ信仰かも知れません。
若林くんの学園生活初めて書きましたが、翼さんに全面的に頼ってしまいました。 この翼さんを排除して初めて何かが始まってくれるのかも知れません。
別の話を書いていたのですが、変な方向に行ってしまったので書き直し中です。 パラレルだからこそ、性格の尊重が大事だと痛感しました。 公開するかどうかは書き直しの結果次第です。
from past log<2008.11.7>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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