※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 全国大会の閉会式が終わってから、若林くんの家の車で、病院に行った。僕は自分で行くと言ったけど、若林くんも譲らなかった。 「お前一人位乗れるから、来い」 押し切られて、乗った車は確かに広かった。
病院で、足とおでこの治療をしてもらった。おでこは消毒液を塗られただけだったけど、足は包帯を巻かれ、地元のお医者さんに通うように言われた。 診療が終わった頃、若林くんの治療も終わったらしい。若林くんもやっぱり包帯姿。 「金は払っておくから」 若林くんのおうちの人が払いに行ってくれたらしい。ふと気づくと、広い待合室には僕達二人だけだった。 「足、痛むか?」 僕より、ずっとひどそうに見える若林くんが尋ねる。 「ううん、若林くんこそ大丈夫?」 「ああ、何とか」 静かな声が、静かな廊下に響く。 それに気づいたのか、若林くんは少しだけ近寄って来た。ひそひそ声で、僕に囁いてくる。 「ゴール守ってくれてありがとうな」 若林くんだけのゴールじゃないのに。南葛SCのゴールはみんなのもの。でも、若林くんにとっては自分のゴールなのだろう。責任感の強い若林くんらしい。 「ううん」 小さく首を振る。それくらいしかできなかった。若島津のオーバーラップだって予想できた僕なのに、判断力も落ちてしまっていた。 若林くんこそすごいと思う。そんな怪我なのに。 「でも、怪我したな。こんなにきれいな顔なのに」 「えっ?」 僕の思考は中断した。耳に入って来た言葉を理解できずに、僕は目をぱちぱちさせた。
きれい?
僕は、僕の顔が好きじゃない。父さんに似ていないから、その顔は他の誰か、を思わせた。無数の疑問が、鏡を見る度に浮かんで消える。
それに、若林くんは、およそそんなことを言いそうにない人だ。小学生とは思えないほど落ち着き払っていて、自信にあふれていて、人の顔なんて気にしそうもない。
「良いよ、たいしたことないから」 サッカーには怪我がつきものだ。足の怪我は気になるけど、それに比べたら、おでこなんてどうでもいい。 「傷、残らないよな?」 そんなに心配しなくても良いのに。 「良いよ。自分の顔好きじゃないから」 女顔で、色々なことを思わせる顔だから。見たくなくても、鏡の前の僕は泣きそうな情けない顔をしている。 「俺はお前の顔好きだけどな」 若林くんは、僕の顔を両手で挟んだ。近くで見る若林くんの顔こそ、整っていて、男らしくて、うらやましいと思うのに。 「もし、傷消えなかったら責任取るからな」 一瞬何をされたのか、分からなかった。唇に残る、知らない感触。 「ちょっ・・・」 言いかけたところで、若林くんのおうちの人が戻って来た。
帰りの車で、運転席に気づかれないように、普通に話すふりをした。 だけど、頭の中はぐちゃぐちゃで、収まらない。
キス、された?
責任取る?
黙り込んだ僕に、若林くんは少しこちらに寄って来た。慌てて顔を反らした僕の耳元に、落とされる囁き。 「本気だからな」
・・・心臓が止まるかと思った。
振り返ると、若林くんは笑っていた。 動揺したら、負けだと思った。 「知らない」 クールを装って答えたけど、きっと、ばれている。
だって、伸ばされた手が、僕の手を優しく握った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 ゴールを守ってくれてありがとう、な話を書くつもりがどうしてこうなったんでしょう? 小学生編の背伸びし過ぎな二人が大好きです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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