※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「君ん家って何でもあるよね」 片付けながら、岬が呟く。このアパートももう長いので、自然に荷物がたまる。普段の掃除はしていても、大掃除をする時間もなかった。 「家の連中が何やかやと送って来るしな」 「そうみたいだね」 岬の相槌に合わせるように、クローゼットの上の物置が崩れた。
送り返す荷物をまとめながら、岬が幾つかの箱を寄越した。 「何だ?」 「ふふ。こっちがオセロで、こっちが百人一首」 片付いたら、やっても良いかも知れない。岬はそんな表情に見えた。
「百人一首なんて久しぶり」 岬が読み札をめくる。子供の頃は毎年出していたが、マトモにやった覚えもない。 「俺は坊主めくりくらいだったな」 家で遊ぶことより、外に出ることが多かった。近所の神社より「若林詣で」の方が多い家では、とてもじゃないが、くつろげない。 「僕もちゃんとやるのは初めてかも」 話しながらも、岬の手は札をきれいに並べている。 「高校の冬休みの宿題で出るんだよ。休み明けにテストがあって。でも、大会挟むからそれどころじゃなくて。ボール蹴りながら覚えたよ」 理系の井沢が苦労していた。フォーメーションは人一倍覚えるの早いくせに。高杉が一番覚えていたとか、石崎はその時も追試だったとか。 取り札を並べる岬の指先は楽しそうに躍る。 「じゃあ、覚えているのか?」 「ううん、結局僕も一夜漬け」 大会が終わらなければ、正月すら来ない。負けて、引きずればなおさらだ。岬の苦々しい口調に耐え兼ねて、素早く取り札を並べた。
事前の申告とは違い、岬はそれなりに覚えていた。CDの読みが終わる前に、大体岬が取った。
「なあ、岬これどういう意味だ?」 二人で片付けながら、眺める。家にあったと言っても、じっくり見るのは初めてだ。 「あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思わざりけり? 恋が成就してからの気持ちに比べたら、その前のもの思いなんて大したことなかったって意味。 ・・・確かに、成就してからの方が、色々考えるよね」 頬に手を当て、何やら考えるそぶりの岬はどこか色っぽい。 「確かに・・・岬さんをどう喜ばせたものか考えるな」 「若林くんっ!」 岬が俺を睨みつける。それは冗談だけど、考えない訳ではない。知れば知る程、岬を好きになる。そしてお前は、俺の側で幸せか?
背中から抱き寄せた俺を振り返って、岬は微笑う。 「そうだね。君と会って、僕は弱くなったかも知れない。でも・・・君と会えて良かった」 人に頼ることが苦手で、寂しいと認められない。昔の岬はそうだった。この細い肩に独りで背負い込んでいた。 「差し当たって、このまま離したくないんだが」 「もうっ片付けられないのに」 怒るフリをしながらも、岬の口調はどこか優しかった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。
百人一首。 どの歌にしようかと悩んだのですが(忍ぶれど、は前に使ったし)これに。意訳なので、細かいことは気にしないでね。
寝オチしていました。明日は忙しいので、今晩サッカー見られないし・・・もう一度ふて寝します。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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