※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 今日はいつもとは趣の違う話です。 「新田」 通り過ぎようとする後輩を先輩が呼び止めた。振り向いた後輩は、いつものように整った顔で微笑む先輩を見遣る。 「何スか、岬先輩」 「僕の顔に何かついてる?」 後輩の視線はいつも通り不躾ではあったが、昔のように不遜ではない。それでも、いつもと違う気がして、岬は尋ねた。 「いや、別に・・・先輩って背高くないすよね」 「うん、普通だね」 むしろ、小柄なことを気にしている。そこまでは口にせず、岬は微笑んだ。自分の話をするよりも、相手の出方を見て、物思いを解消してやるような余裕が岬にはある。そして、今日は新田の話を聞くつもりだった。 「でも、日向さんとか松山さんに負けてませんよね」 全国大会で、毎年のように対戦する東邦やふらの。体格やパワーといったフィジカルでは明らかに劣っているのに、競り負けることも、いや競り合いに持ち込まれないようにすることすら、あまりない。 普段は笑顔で優しい先輩だが、フィールドではそうでもない。 二年前にフランスで会った時から、周囲には一目を置かれているように思った。それは決して、大空翼の唯一無二のパートナーだから、という訳ではない。 「まあ、長い付き合いだからね」 こうして話す時は静かなのに、この先輩の心や魂がそうでないことを、新田自身がよく知っていた。
それに比べて、自分はどうだろう。
中学二年の時に、大空翼に挑んだ。世界にも出た。その時よりも成長したはずなのに、この一見優しい先輩に勝てる気がしない。 その優しげな姿に似ないスタミナ、派手ではないが、正確無比なテクニックで、常に実力者としての評価を得ている。
「岬先輩、俺のこと頼りにならないって思ってません?」 ずっと気になっていたことだった。南葛が東邦に勝るのは、岬と井沢がいる中盤、堅守のDF。ただ、いくらリードしても、決定力のないチームは勝てない。 「頼りにしてるよ。小次郎よりずっと扱い易いし」 岬だって、挫折がなかった訳ではないだろう。焦りがないとも思えない。けれども、それを絶対に人にはぶつけない。いっそ、石崎のようにぶつけてくれれば、新田の心は痛まないのに。 何か言いたげな目をする新田に、岬は静かに微笑んだ。 「新田、僕のパスは受けにくい?」 「そんなことないっス」 おそらく、最高のパスだと新田は思う。岬の心遣いをそのまま形にしたように、欲しいところに絶妙のタイミングで来る。 「責めるのは簡単だよ。でも、僕は皆と勝ちたいんだ」 岬が競り負けないのは、岬の心の強さだと新田は思った。優しいだけではなく、強いから誰も責めないでいられる。 「分かったら練習ね」 岬の微笑みは胸に突き刺さるようだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 普段とは違う岬くんの姿を。おそらく誰より怖い先輩だと思います。自分に厳しく、相手には優しいし要求もしないので、かえって従ってしまいそう。 次に怖いのはおそらく井沢くん。理詰めなので、なかなか逆らえません。 浦辺くんは優しい先輩、石崎くんは反面教師な先輩、森崎くんは先輩らしからぬ先輩、石崎くんは大人げない先輩、滝くんと来生くんはフレンドリーな先輩、高杉くんは案外面倒見の良い先輩だと思います。シャーク岸辺くんは甘やかしそう。でもみんな新田くんが可愛いのではないかと。
そうなると、若島津くんの威厳って貴重ですね。
以下、コメントお礼。
なお様、いつもありがとうございます。 あのPKは本当にすごかったですね。私も若林くんに見えましたとも! しょっちゅう携帯が繋がらずに再起動している有様ですが、頑張りたいものです。 寒い日が続いていますので、体調にお気をつけ下さい。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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