※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 またため息が出る。
つい色々考えてしまう。松山なんかはお前は考え過ぎだって決め付ける。井沢はしょい込み過ぎだ、と呟く。
そうかも知れない。
でも、気がつくと考え込んでいる自分がいる。
「そう気負わないことだよ」 「君には言われたくないよ」 僕の肩を叩いて行った三杉くんに怒りをぶつけたってしょうがない。
自分の無力が辛い。若林くんに怪我をさせたのは、僕の余裕のなさだと思う。若林くんは、違うと言い張るけど。
息を吐いて、背筋を伸ばした。それからグラウンドに出る用意をする。 いつだって、僕の辛さも喜びもこのボールに繋がっている。感情をぶつけるのはいつもこのボールだった。 部屋を出ようとした時に、携帯が鳴った。
「もしもし」
ディスプレイを見て、まさかと思った。声を聞いても、すぐには現実感が湧かなかった。 「病室抜け出して何やってるんだよ」 つい声を荒げた僕に、いつもの声が優しく語りかける。 「岬、元気か?」
どうして、君には分かっちゃうんだろ?
君の声が聞きたいと思っていたことを、僕は知らなかったのに。
「・・・元気だよ」 何せ、ボール抱えて自主トレしようというくらいだ。十分元気だろう。 「嘘つけ。俺がいなくて寂しいんだろ?」 自分だって大変なくせに、僕の心配ばかりしないでよ。それも茶化したりして、ひどいよ。 言おうと思った。でも、若林くんの声は優しくて、怒るつもりなのに、安心してしまう。口にするつもりだった言葉は消えて、代わりに違うものが沸き上がって来るのを感じる。 感動する。自分はこんなに好きなんだと、自覚させられてしまう。 「うん。会いたいよ」 気がついたら、口にしていた。しまった、と後悔する間もなく、若林くんが言う。 「俺も会いたいよ」 たった一言なのに、胸に沁みた。次の言葉さえ、出てこない。嬉しいのと寂しいのと情けないのと申し訳ないのと、ごちゃごちゃした渦に、呑まれているようで。 「若林くん」 かろうじて声が出た。 「何だ?」 返って来た声は、いつも通りなのに、すごく甘い気がする。僕は疲れているのかも知れない。疲れているから、甘いものに惹かれるのかも知れない。
「好きだよ」
結局言葉に結実したのは、それだけ。でも、電話の向こうで若林くんが息をつく。 「岬、やっぱり電話して良かったよ」 僕が弱っているのに気付いたのかな?若林くんはいつだって聡いから。僕は知らず知らず身構えてしまう。 「岬の熱烈な告白が聞けるなんてな」 「ちょっ・・・」 若林くんの笑い声が、耳にくすぐったい。火照ったままの頬が、つい緩む。
自主トレは、顔が戻ってからにしないと。ますます赤くなる頬に困りながらも、楽しくボールを蹴れる予感がした。
(おわり)
年始に一文だけ書いていたのが、今日この分量に。時間かかりすぎです。 若林くんの声って甘いですよね。携帯だと3割増しに違いありません。想像しただけでうっとりします。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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