※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 岬は俺の言葉に、弾かれたように、瞬きをした。聞こえなかった訳ではない。それはそのまま向けて来た笑顔に現れていた。 「だから美味しいんだね」 俺がつまらない冗談でも口にしたかのように、あっさりとかわされる。
分かっているくせに。
「茶化すなよ」 自分でも恐ろしい声が出たものだと思う。お前が怖いと思うなら、怖くすることなんか簡単なんだ。それこそ、はぐらかすことすら出来ないほど。 「茶化してなんかないよ」 岬はわざとらしい明るい声を出した。そうすれば、いつものように、俺が許すと思ってのことだろう。
でも、逃がしはしない。
岬は静かにスプーンを使い始めた。いつもながら、流れるような動きだ。時々、スプーンがシチュー皿を滑る音を立てるだけで、苦しいような沈黙がある。 岬は作戦を変えたようだ。シチューを食べ終えたら、出ていくつもりだろう。 「ごめん、君の気に障るようなことしちゃって。僕、帰るね」 あっさりと言うのだ。
いつもの構図だ。俺が一歩詰めると、岬は一歩逃げる。お互いの距離は変わらないまま、いつもの友達ごっこが続く。
その前に、俺は立ち上がり、玄関の鍵をかけ、玄関のドアの前に、スキー板を立てかけた。その前に大きな傘立ても置き、ゴルフバッグで隙間を埋める。こうなれば、簡単には動けない。あいつも、俺も。
作業を終えて、部屋に戻ると、岬は洗い物を終えたところだった。 こんな時でも、後片付けを欠かさない辺り、実に岬らしい。 「ひどい雪だから、玄関塞いで来た」 俺の言葉に、岬は一瞬押し黙る。 「そう・・・」 静かに相槌を打って、岬は最後の皿を皿立てに置いた。 「とりあえず、コーヒー掩れるから座れよ」 俺の言葉にも、素直に従った。
熱いコーヒーで、人心地ついた気がした。ソファーの端に陣取る岬はそうでもない様子だ。 「とりあえず、取って食いはしない。その代わりに、返事聞かせろよ」 「返事?」 聞き返す表情はぎこちない。外の雪を視線の端で恨めしそうに眺めているのが分かる。 「俺は岬が好きだ。・・・お前は?」 君は、簡単に好きだと言い過ぎる、と岬はいつも言う。悪いが、他の奴には言ったことがない。言うまでもなかった。俺が追いかけて、手の中に落ちて来ないのは、お前だけ。 「そりゃ、君のことは好きだけど・・・」 「そういう答えが聞きたいんじゃない」 特別な友達で満足出来たのは、初めの内だった。特別な存在になりたいと願っても、許してもらえないのなら、満たされない心で傷付ける前に、遠ざかるしかない。 「時間ならある。電車も止まったみたいだ」 雪の中、望む望まぬに関わらず、岬と俺の二人きり。岬が息を飲んだのが分かった。
(つづく)
今日は疲れたので、早く寝るつもりが、思いの外遅くなってしまいました・・・。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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