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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
吹雪(2)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 岬は俺の言葉に、弾かれたように、瞬きをした。聞こえなかった訳ではない。それはそのまま向けて来た笑顔に現れていた。
「だから美味しいんだね」
俺がつまらない冗談でも口にしたかのように、あっさりとかわされる。

 分かっているくせに。

「茶化すなよ」
自分でも恐ろしい声が出たものだと思う。お前が怖いと思うなら、怖くすることなんか簡単なんだ。それこそ、はぐらかすことすら出来ないほど。
「茶化してなんかないよ」
岬はわざとらしい明るい声を出した。そうすれば、いつものように、俺が許すと思ってのことだろう。

 でも、逃がしはしない。

 岬は静かにスプーンを使い始めた。いつもながら、流れるような動きだ。時々、スプーンがシチュー皿を滑る音を立てるだけで、苦しいような沈黙がある。
 岬は作戦を変えたようだ。シチューを食べ終えたら、出ていくつもりだろう。
「ごめん、君の気に障るようなことしちゃって。僕、帰るね」
あっさりと言うのだ。

 いつもの構図だ。俺が一歩詰めると、岬は一歩逃げる。お互いの距離は変わらないまま、いつもの友達ごっこが続く。

 その前に、俺は立ち上がり、玄関の鍵をかけ、玄関のドアの前に、スキー板を立てかけた。その前に大きな傘立ても置き、ゴルフバッグで隙間を埋める。こうなれば、簡単には動けない。あいつも、俺も。

 作業を終えて、部屋に戻ると、岬は洗い物を終えたところだった。
 こんな時でも、後片付けを欠かさない辺り、実に岬らしい。
「ひどい雪だから、玄関塞いで来た」
俺の言葉に、岬は一瞬押し黙る。
「そう・・・」
静かに相槌を打って、岬は最後の皿を皿立てに置いた。
「とりあえず、コーヒー掩れるから座れよ」
俺の言葉にも、素直に従った。

 熱いコーヒーで、人心地ついた気がした。ソファーの端に陣取る岬はそうでもない様子だ。
「とりあえず、取って食いはしない。その代わりに、返事聞かせろよ」
「返事?」
聞き返す表情はぎこちない。外の雪を視線の端で恨めしそうに眺めているのが分かる。
「俺は岬が好きだ。・・・お前は?」
君は、簡単に好きだと言い過ぎる、と岬はいつも言う。悪いが、他の奴には言ったことがない。言うまでもなかった。俺が追いかけて、手の中に落ちて来ないのは、お前だけ。
「そりゃ、君のことは好きだけど・・・」
「そういう答えが聞きたいんじゃない」
特別な友達で満足出来たのは、初めの内だった。特別な存在になりたいと願っても、許してもらえないのなら、満たされない心で傷付ける前に、遠ざかるしかない。
「時間ならある。電車も止まったみたいだ」
雪の中、望む望まぬに関わらず、岬と俺の二人きり。岬が息を飲んだのが分かった。

(つづく)

今日は疲れたので、早く寝るつもりが、思いの外遅くなってしまいました・・・。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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