※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 いつ以来かの続きです。
次の日、岬が目を覚ますと、城は思いの外静かだった。いつもなら、贅沢に使われる湯を沸かす音や、廊下を行き交うたくさんの足音が、何とも暖かい雰囲気を作り上げているのに。 「大変だよっ!」 不思議に思って、部屋を出た岬の目に飛び込んできたのは、翼だった。慌てていたらしく、窓枠で羽を打ちつけ、痛そうにしている。 「どうしたの?」 岬は慌てて身を起こして、翼を受け止めた。 「みんなが消えちゃった」 「ええっ?」 岬は聞き直したが、返ってくる答えは同じだった。 「どうして?」 館に押しかけて来た人々は帰らせた。当分は城は大丈夫のはずだった。 「若林くんが、元に戻る気がないって言い出して・・・みんな、魔法使いを探し出すって息巻いてたんだ」 そう言えば、例の魔法使いを若林が保護しているらしい、と誰かが言っていた。若林を大事に思っている城の住人達が、呪いをかけた張本人に抗議しようと思いついたところで、責めることはできない。 「じゃあ、若林くんは?」 「部屋にいると思う」 翼を寝台に寝かせると、岬は身を翻し、若林の部屋に向かった。大理石の廊下に足音を刻ませないような速さで、城の主の部屋にたどり着く。 「若林くん」 ノックにも返事がなかったので、岬は扉を開けた。
城の主は背を向けたまま、椅子に座っていた。威厳を感じさせる姿勢を崩してはいないものの、その背中は孤高を刻み、どこか寂しそうに見える。 「高杉、告白は無理だ。昨日も言った通り、あいつの心を縛ろうとは思わな・・・」 言葉は前触れもなく、途切れた。不自然さを感じた岬は素早く身を隠そうとしたが、一歩遅かった。熊の嗅覚は人間のそれとは比べものにならない。 「岬か・・・」 苦さを感じさせる声に、岬は身動きが取れなくなった。 「みんながいなくなったって聞いたから・・」 弁解するつもりはないのに、口ごもらずにはいられない。扉の側に立ち尽くす岬に、若林が歩み寄った。
(つづく)
すみません、いつまで続ける気だっ!と自分に突っ込んでおきます。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|