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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
温泉(下)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 温泉のチケットを入手したというのは嘘じゃない。ただ、日本に帰る用事ができた、というのは嘘だった。岬と旅行に行けるなら、オフを費やしても惜しくない。
「へえ・・・きれいなところだね」
大浴場があるだけでなく、各棟に露天風呂があるこの宿は、今まで来た中でも一番気に入っていた。チケットと言っていなかったら、贅沢だ、と断られていたかも知れない。岬が受け入れてくれたことに安堵しながら、部屋に入る。
「へえ・・・浴衣あるんだ」
珍しいのか、岬は丹前までしっかり着込んだ。そう言えば、岬の浴衣姿を見るのは初めてだ。それが旅館の浴衣なのは残念だが、新鮮な気がした。
「じゃあ、風呂行こうぜ」
「え・・・僕、後で良いよ」
「一緒に行かないと意味ないだろ?」
強引に袖を引く。岬は少しおいてから、頷いた。

 大浴場には他に誰もいなかった。団体客の着く時間には未だ早い。尻込みする岬の背を押して来た甲斐はあった。
「さあ、入ろうぜ」
「・・・うん」
岬はうつむきながら、浴衣の帯を解いた。昔は銭湯に通っていたはずなのに、ことさらに恥ずかしがる岬に、俺を意識しているのだと気付いた。仕方なく、扉の方を見ていると、衣ずれの音がした。振り返りたいのを堪えて、待つ。
「待たせて、ごめん」
岬は静かに言って、扉を開けた。湯気の煙る中、岬の肌は抜けるように白い。なだらかな肩や、ほっそりした肢体に、思わず息を飲む。
「わあ・・・広いね」
「ああ。ゆっくり浸かれるぞ」
ふと振り返ると、岬は恥ずかしそうに真っ赤になっていた。
「あの・・・若林くん、できればこっち見ないでくれる?」
とんでもない。隣に裸の岬がいるのに、振り向かないなんてもったいない。白い首やきれいな鎖骨や・・・一瞬で目に焼きついた残像をたどるだけでも、興奮せずにはいられない。
「分かった。少し温まったら、背中流してやるな」
「え・・・」
譲歩はしてやった。だが、岬は絶句して後ろを向いてしまった。おそらく、もっと赤くなっているに違いないと思うと、可愛くて仕方なかった。肩越しに様子を窺いながら、抱き締めたくなる気持ちを抑える。
「空を見ながらお風呂入れるって良いね」
「岬は露天風呂初めてか?」
「うん。思ったより広くて、びっくりした」
「顔とか洗ったらつるつるになるぜ」
「本当?」
「ああ。俺の顔触ってみるか?」
「良いよ。自分で試してみる」
岬がぱしゃぱしゃと水をすくう音がした。背中合わせで風呂に浸かっているのは少し味気ないが、それでも、話している内に岬の心がほぐれたように思えた。
「そろそろ、体洗おうぜ」
「うん・・・」
岬は静かに立ち上がった。湯で洗わなくてもつるつるの肌が、しっとりと湿って、何ともいえない色気を醸し出している。
「背中、洗ってあげる」
岬はそう言って、後ろにまわった。早く岬を見たい。早く岬に触れたい。
「じゃあ、その後交替な」
背中に触れた腕を捕まえた。岬は驚いて言葉を失った様子だった。
「離してよ。背中、洗えないよ」
はっきりいって、俺の背中なんかどうでもいい。そう思ったのに、優しく背中を擦る手が、岬のものだと思うと、だんだんと理性が失われていくのが分かる。なるべく意識しないように、優しい拷問を耐え忍ぶ。
「交替な」
岬は公平な性格だ。恥ずかしがりはしても、なるべく約束は守ろうとする。
 渋々交替した岬の背中は思っていた通りに白くてきれいだった。タオルで擦る前に、そっと手で触れる。
「若林くん、触り方がいやらしいよ」
肩を竦めて、岬の身体は完全に防御態勢だ。ごまかして、タオルを通さずに触れたのがバレたらしい。弱ったように落とされた肩も、白い襟足も、すぐにでも抱きしめたいのを必死で我慢する。
「そりゃあ、お前と二人なのに、そうならない訳ないだろ?必死で耐えてるんだぜ」
岬が俺のことを好きなのも分かっている。それでも一歩踏み出せないことも。
 俺だって、いつまでも待ってはやれないだろう。ある日、耐え切れなくなって、お前を壊してしまうかも知れない。それぐらい、お前が好きで、それで失うことに耐えられないぐらい、愛している。
 開放感に期待していなかったとは言えない。だが、その目論見はどうやら失敗だったようだ。
 虚しく髪を洗ったところで、くしゃみが出た。
「・・・いつまでもそうしてたら、冷えるよ」
岬は俺の手を引いてくれた。二人で並んで湯に浸かる。
「もしかして、こっち側の方が眺め良いのか?」
「そう。だから今度は一緒に見たいな、と思って」
肩も触れ合いそうな隣で、岬が微笑む。
「君と見たいし」
ごく小さな声で呟かれた言葉に、焦ることはないのだ、と胸に希望が点る。少し濁った湯の中で、繋いだ手を少し強く握った。

(夜編に続く?)

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。
新年早々こんな更新ですみません。(色々な意味で)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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