※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 久しぶりに岬が遊びに来たというのに、若林ときたら、ホラー映画の画面を睨みつけて苦虫を噛み潰したような顔をしている。 理由は簡単だ。 てっきりホラー映画は苦手なのだと踏んでいた岬が、平然と鑑賞していること。その上、 「若林くんって、こういうの好きなんだ?意外だね」 などと冷静かつ突き放した言い方をされたからである。 勿論、ホラー映画が特に好きな訳ではない。ホラーの苦手な岬が、ほんの少しくっついてくれたら、なんて思っただけ、他愛のない悪戯である。 「岬こそ、ホラー苦手じゃないのか?」 ホラー好きで、趣味の合わない奴、というレッテルを貼られる前に、若林は弁明に聞こえないよう、誤解が解けるように努めた。 「どうして?」 岬は平然と画面に目を向ける。画面がチカチカと目まぐるしく光るのを受けながらも、岬の整った顔は静かなままだ。
触れたいのに、触れられない。 微妙な距離が二人の間には存在していて、簡単に飛び越えるさえ容易く見えるのに、いつまでも縮まらない、切ない小川。 迂闊に飛び越えたら、嫌われてすべてが終わってしまうかも知れない。そう思うと、怖いものなどないはずの若林でも、その小川が大河のように思えてくる。 こうして、会いに来てはくれても、触れられずにいる。
「だって、お前、俺の傷見ないようにするから」 何年か前に召集された合宿で、以前にあったことだった。若林が怪我をした時、岬は少し目を背けていた。血の気が引いて、ただでさえ白い顔がとても白く見えた。 「それは・・・」 岬は口ごもり、少し沈黙した。視線を下にずらし、伏せられた顔が、みるみる朱を含んでいく。 それから、岬は一語一語を選ぶように、ゆっくりと切り出した。 「ねえ、若林くんも知ってるよね?僕、自分の怪我の消毒とか普通にするよ」 確かに岬の言う通りだと若林も思った。同じ合宿で岬が怪我した時は、心配してオロオロする周囲をよそに、一人でさっさと消毒していたし、他の者が怪我をした時も手際よく治療をしていたのは岬だ。 「じゃあ・・・」 若林に握りしめられた手を振りほどけずに、岬は目を反らせようとする。だが、それも許されはしなかった。ソファーに押さえ付けられた岬は、諦めたように、若林に微笑む。 「何でだろうね?」 たった一言を言い終わる前に、その言葉は接吻に消えた。
(おわり)
ホラー映画って吊橋効果と言われますが、どうなんでしょうか? 最近、携帯の電波状況が悪いので、今日も更新できることを祈りつつ。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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