※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 クリスマスが近くなると、街中が赤と緑に覆い尽くされる。それは日本でも変わらない。最近では海外に対抗しているのかと思う位、イルミネーションもあふれている。 「ツリーとかチキンとかは分かるけど、なんでクマなんだ?」 石崎くんがショーウインドーを指差して尋ねてきた。 「なんだ、石崎もクリスマスに興味あるのかよ?」 「興味はあるけど、縁がないんだろ?」 滝くんのからかいに、井沢が見事な切り返しをみせる。・・・井沢が言うのは、はっきり言ってイヤミじゃないだろうか。石崎くんったら目を白黒させている。 「違うわいっ!家の銭湯で、クリスマス湯が出来ないかと思って、研究中なんだ」 石崎くんはこう見えて、進取の気がある。でも、さすがにクリスマス湯は・・・。 「何か言いたそうだな、岬」 「そんなことないよ・・・」 顔に出したつもりはないけど、こう付き合いが長いと分かるものもあるんだろう。石崎くんの向こうのガラスに目を向け、テディベアに気付いた。 「テディベアって、贈り物の定番だから、クリスマスのプレゼントでも人気あるんじゃない?」 日本と違って、小さいうちから子供が独りで寝る国では、テディベアは単なるおもちゃではないと聞く。 テディベアが無表情なのは、子供が感情移入しやすいため。愛嬌のある姿もあって、人気が衰える気配はない。 といっても、僕はテディベアを持ったことはない。僕自身には無縁だった。 だから、テディベアを見ると思い出さずにはいられない。
「これ、俺のクマ。年季入ってるだろ?」 前に若林くんが見せてくれたテディベアは、世界的に有名なメーカー製だったが、随分傷んでいた。 「ジョンを飼う前は、ずっと抱いて寝てたんだぜ」 子供の頃の僕は、一人の部屋で寝たことは少なかった。寂しくても怖くても、手を伸ばせば父さんに届いた。 ぼろぼろのテディベアの腕は、きっとずっと握られてきたからに違いない。
会いたい、と思った。寂しい思いをさせたくはない。寂しいと思っているのを想像するだけで、心に冷たい風が吹く。
ううん、きっと今寂しいのは僕。こうして、みんなに囲まれているのに、君の腕を探している。
「へえ、じゃあ妹にプレゼントしてやるかな」 「それ本当に妹かよ」 「イイ兄貴ぶりやがって」 相変わらずの仲間の相変わらずの会話に、心が和む。この会話も、この空気も、クリスマス湯の話も全部届けることに決めて、僕は帰途についた。
(おわり)
クリスマス前にUPするつもりで、書いていたのに、すっかり忘れていました。 クリスマスの話に繋がっているはず・・・。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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