※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 好きだと言われた時に、すぐに答えられなかった。幸せ過ぎて、すぐには信じられなかった。 その躊躇いをどうとったのか、若林くんは背中を向けた。 「悪かったな、変なこと言って・・・忘れてくれ」 僕は青ざめていたと思う。それ以上何も言わない君の背中に怯え、君を失うことを恐れた。 「若林く・・・ん」 「せめて友達でいてくれよな」 せっかくの誕生日なのに、凍ったような時間が流れた。もらった花束に、くちづけしても、もらった時の喜びは蘇ることはなかった。
それからしばらく経つ。若林くんの言葉通り僕達は友達に戻り、何度目かの誕生日がまた巡る。
「ミサキ、もうすぐ誕生日だな」 ピエールの投げかけに、首だけで頷く。身構えてしまっていることに気付かれないよう、口元だけで笑ってみせる。 「ありがとう」 「じゃあパーティー・・・」 「・・・は要らないからね」 言わんとすることは分かっていた。タイミングを完璧に合わせて返す僕に、ピエールは憮然とするでも憤慨するでもなく、したり顔で応じた。 「恋人に祝ってもらうのか?」 悟られるようなヘマをしたつもりはないのに、どうしてそんなことを見抜いちゃうんだろう?やっぱり経験値?友人の洞察力に舌を巻きつつ、ピエールを見上げた。 「どうして、そう思うの?」 「そりゃ、ミサキにしてはあんまり余裕のない顔をしているからさ」 顔?自分の顔を触って確かめたい衝動を抑え込む。・・・確かに余裕があるとは言えない。 若林くんがちょっと寄ってくれるだけなのに。それも遠征のついでなのに。
緊張する。
若林くんはあの時のことをおくびにも出さない。友達といった言葉通りに振る舞ってくれる。でも、僕の中には、あの時言えなかった想いが残っていて・・・若林くんの視線や言葉に、あの時のかけらが落ちていないか漁ってしまっている。 あの時、手を離したのは僕。繋ごうと伸ばされた手を振り払って、それからずっと後悔は降り積もっている。・・・想いも。 「・・・はずれ。好きな人なのは合ってるけど」 降り積もった年月の重さがなかったら、そんな軽口は叩かなかった。笑ったつもりでいたのに、ピエールはずかずかと歩いて来て、僕の頭を撫でた。 「ミサキに想われて、受け入れない相手がいるとは思えないね」 自信たっぷりに言われて、かえって切なくなる。 「・・・そんなことないよ。僕が振ったんだから」 若林くんは一度振られた相手に、未練を抱くようなタイプじゃない。あれだけプライドが高い人なんだから。友達でいてくれるだけで、感謝してしまうくらい。 「それなのに好きなのか?」 呆れ顔のピエールに、僕は固有名詞を伏せ、簡単に事情を説明した。だから無理だとうなだれた僕に、ピエールは挑発的な目を向けた。 「じゃあ、賭けをしようか?」 「賭け?」 「そうだ。ミサキから相手を誘えば良い。俺は乗ってくる方に賭けるよ」 すごく簡単に言ってのけたピエールを睨みつける。相変わらず上手な挑発と励ましだけど、そんなにうまくいかないよ。 「・・・うまくいくはずないよ」 「じゃあ賭け成立だな。自信をもてよ、ミサキ。お前は俺のたった一人のパートナーなんだから」
(つづく)
・・・続けるつもりなんかなかったのに、長くなって5日中に間に合わず。忙しかったんです。はあ。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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