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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
「美人と野獣と小動物たち」(9)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 岬が帰らない意志を明らかにしたことで、館の皆は安堵した。だが、その一方で、顔を曇らせている者もいた。
「どうするんですか!?」
高杉の言葉に、若林は首を振る。
「どうにもならないだろう?俺の今の姿を見ろよ」
茶色い前足を伸ばし、自嘲的に呟く若林に、高杉は飾り棚に置かれたオブジェを指差す。
「でも、このままでは、若林さんは・・・」
魔法使いが置いたハートのオブジェはガラスでできており、キラキラと光を弾く。だが、その色は淡いピンクから、血を思わせるような紅に変わりつつあった。
 僕が死んだら、この魔法は解けなくなる。このハートは僕の脆い心臓なのだ、と魔法使いは言った。
 それまでに、好きな相手と想いを通わせること、それが魔法を解く唯一の方法だった。
 魔法使いを倒して解ける魔法ならば、とっくにそうしていた。この醜い腕ですぐにでも八つ裂きにして、魔法の源になっている心臓ごと滅した。
 しかし、今の若林にできるのは、魔法使いを保護し、生かすことと、自分の好きになった相手が側にいてくれていることを喜ぶだけ。
「元の姿なら、とっくの昔に奪ってる」
鋭い爪も剛い毛も強すぎる力もなかったとしたら。
「分かります。でも、時間が・・・」
セントバーナードの姿のまま、高杉はハートを見上げる。誇りの高い若林のこと、姿を変えたのが自分だけならば、とうに自ら命を絶っていたに違いない。他に救わねばならない者がたくさんいることで、若林は生きて苦悩している。それだけでも有り難いことだと高杉は思っていた。少し前までは。
 だが、若林は好きな相手を見つけてしまった。触れることもできず、想いを伝えることもできない苦しみは、恋を知る前よりもずっと深い。
「このままだと、あと三日、です」
高杉はできるだけ平静を装って、若林に告げた。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
終わりません。
風邪でPC環境に戻れず、色々滞っています。
何より書くペースが・・・。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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