※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「岬は、俺のことを名前で呼んでくれるんだな」 若林の言葉に、岬は不思議そうな表情を浮かべる。 「別に普通のことだと思うけど」 今まで畏怖をもって語られてきた若林からは当たり前ではない。また岬を抱き上げたくなって、若林は何とか自制する。 「俺が怖くないのか?」 自分で見るのも嫌な姿だ。最初の日に鏡をすべて叩き割った程忌まわしい。 「どうして?君が父さんを助けてくれたんだよね?」 目を逸らさず微笑む岬に、若林もつられて笑った。そういう所作が人間らしい、と言いかけて、岬は立ち止まった。一瞬、若林の陰が揺らいで見えた。 「どうした?」 「う・・ううん、何でもない」 目の錯覚だ、と岬は頭を振った。
岬が館に来てしばらく経った。だが、岬は若林に肝心のことを聞けずにいた。
自分のことを好きかどうか。
もし好きでも何でもない、と言われたら。聞けそうにはない。
その頃には、岬は館の手伝いもするようになった。特に毛刈りは大人気だった。終わった後に優しく撫でられるのが心地よく、羊の来生などは眠りこけてしまったくらいだ。 「若林くんも切ってあげようか?」 大きな椅子にどっかり座った若林に、岬は尋ねる。他の者にするような、ブラッシングのサービスはないものの、こうして優しく話しかけられるのは悪い気がしない。 「ああ・・・ありがとう」 ぎこちなく頭を下げる若林に、岬は微笑むとハサミを取り出した。伸びている毛を少しずつ短くしていく。 「岬、魔法のことを聞いたらしいな」 「うん・・・」 どこまで聞いたか、までは知らない。ただ、岬が興味を持ってくれたらしいと報告する井沢の様子から判断して、若林は嬉しく思った。 「じゃあ、いっそその魔法使いを捕まえたらどうかな?協力するよ」 「は・・はは、それは良いな」 話をそらす為とはいえ、思い切ったことを言う岬からは、元に戻したいという思いが伝わってきた。 「気持ちは嬉しいが、岬を危険な目には合わせたくない」 熊の笑顔、は岬の目の前で揺らぐ。男らしい、精悍な顔がほのかに見えて、岬は目を瞬かせた。
魔法が解けかかっているの?
岬がそう思った時だった。
(つづく)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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