fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
「美人と野獣と小動物たち」(3)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 若林は岬を抱き上げはしたものの、岬の困惑の表情に気付いて、すぐに下ろした。
 シンプルな空色のドレスは岬によく似合っている。初めて見た時から可愛いと思っていた。絵を描く父親の側で風と戯れ、雲に憧れる様子に心惹かれた。
「腹減っただろ?食事にさせる」
若林が指を弾くと、犬達が食事を運び込む。大きな犬や小さな犬が皿を並べる様子につられて、岬も黙って席についた。
「あ、おいしい」
「せっかく来てくれたんだ。絶対に不自由はさせない」
熊という動物は今まで見たことがなかったけれど、案外表情が分かるものなんだな、と岬は感心した。こうしているだけで若林が上機嫌なのも分かる。
「ありがとう」
機嫌は良くても、家に帰してくれる気はないらしい。岬はそう判断して、周囲を見渡した。馬車で来た時には余裕がなかったが、窓から見える景色は空が澄んでいて、心が休まる。向こうが自分を解放する気のない以上、抗議するよりも情報を集め、対策を練ろう、と岬は考えた。
「庭を散歩して来ても良い?」
「ああ。ちょうど庭を案内しようと思っていた」
腕を差し出され、仕方なく岬は手を伸ばした。女性ではないのだから、と思うが、確かに大事にしてはくれるようだ。もっとも逃がさないようにしているのかも知れないが。
「ああ、その靴では歩きにくいな」
すっとすばやく後ろにまわったかと思う間に、抱え上げられて、岬は焦った。
「下ろしてよ」
「まあそう言うな。うちの庭で怪我でもされたら庭師が泣く」
若林は軽々と岬を抱いて進む。熊の姿ではあるが、その振る舞いは紳士そのものである。手袋をはめ、襟元にはタイを締めているので、首から下だけでは、およそ熊には見えない。
「その・・・優しくしてもらっても、僕は嫁にはなれないよ」
遠慮がちに言った岬を、若林は静かに見つめる。森で見かける度に、もっと近くで見てみたいと思っていた。父親に優しく話しかける姿に、話をしたいと願った。そして、話したら、もっと好きになった。
「じゃあ、側にいてくれるだけで良い」
まだ、時間はある。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
元があれ、なのですが、随分変わってきている気がします。良いのか悪いのか。(2/21PC編集)
スポンサーサイト



テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/590-d1952032
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)