※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 若林は岬を抱き上げはしたものの、岬の困惑の表情に気付いて、すぐに下ろした。 シンプルな空色のドレスは岬によく似合っている。初めて見た時から可愛いと思っていた。絵を描く父親の側で風と戯れ、雲に憧れる様子に心惹かれた。 「腹減っただろ?食事にさせる」 若林が指を弾くと、犬達が食事を運び込む。大きな犬や小さな犬が皿を並べる様子につられて、岬も黙って席についた。 「あ、おいしい」 「せっかく来てくれたんだ。絶対に不自由はさせない」 熊という動物は今まで見たことがなかったけれど、案外表情が分かるものなんだな、と岬は感心した。こうしているだけで若林が上機嫌なのも分かる。 「ありがとう」 機嫌は良くても、家に帰してくれる気はないらしい。岬はそう判断して、周囲を見渡した。馬車で来た時には余裕がなかったが、窓から見える景色は空が澄んでいて、心が休まる。向こうが自分を解放する気のない以上、抗議するよりも情報を集め、対策を練ろう、と岬は考えた。 「庭を散歩して来ても良い?」 「ああ。ちょうど庭を案内しようと思っていた」 腕を差し出され、仕方なく岬は手を伸ばした。女性ではないのだから、と思うが、確かに大事にしてはくれるようだ。もっとも逃がさないようにしているのかも知れないが。 「ああ、その靴では歩きにくいな」 すっとすばやく後ろにまわったかと思う間に、抱え上げられて、岬は焦った。 「下ろしてよ」 「まあそう言うな。うちの庭で怪我でもされたら庭師が泣く」 若林は軽々と岬を抱いて進む。熊の姿ではあるが、その振る舞いは紳士そのものである。手袋をはめ、襟元にはタイを締めているので、首から下だけでは、およそ熊には見えない。 「その・・・優しくしてもらっても、僕は嫁にはなれないよ」 遠慮がちに言った岬を、若林は静かに見つめる。森で見かける度に、もっと近くで見てみたいと思っていた。父親に優しく話しかける姿に、話をしたいと願った。そして、話したら、もっと好きになった。 「じゃあ、側にいてくれるだけで良い」 まだ、時間はある。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 元があれ、なのですが、随分変わってきている気がします。良いのか悪いのか。(2/21PC編集)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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