※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 今日から、しばらく以前からやりたかったファンタジーをやります。 父親の帰りが遅いのはいつものことだ。そして、突然夜中に帰って来るのも珍しくない。ところが、この日は少し様子が違っていた。 「どうしたの、父さん?」 青ざめた顔で戻って来た父に、岬はとりあえず熱い茶を飲ませて落ち着かせた。 「それが・・・」
岬の父親は放浪画家である。いつも岬を置いて、絵を描いて歩いている。 その日も風景をスケッチしていた父親は、良くない行為を目撃してしまった。しかも相手と目が合い、あわやという時に通り掛かったのは、大きな熊だった。 「おい、こんなところで何してるんだ」 熊は男達を押しのけて、父親を庇った。 「邪魔したらお前でも容赦はしないぞ、若林」 「あれを見られたからには、生かして帰せないだろ」 口々に訴える男達に熊は牙を剥き、唸り声を出した。 「悪いが、これは俺の舅だ。放っておく訳にはいかないな」 庇ってくれていると分かってはいても、巨大な熊の咆哮は恐ろしかった。だから、男達が立ち去った後、本当に子供を連れて来るように言われた時も、逆らうことなど出来なかったのである。 「息子しかいないって言ったんだよね?」 岬の言葉に父親は何度も首を振って肯定する。緊張がまだ解けないらしい。 「分かったよ」 まだ恐怖感の抜けない父親に、岬は頷くしかなかった。
次の夜、日が落ちるのと同時に家の前に馬車が止まった。町外れの家を訪れる者などいない。来ない二人を迎えに来たのは明らかで、岬は表情を険しくした。 「父さん、行って来ます」 少女とも見紛う花のかんばせで父親に微笑みかけ、まるで、山に食物を取りに行くかのように軽く言うと、岬は馬車に乗り込んだ。しかし、一人になった馬車で、岬は静かに考え始めていた。
連れて来られたのは、美しい館だった。近くの領主の城にも比肩しうる壮麗な館に、岬は圧倒された。 「ようこそ、いらっしゃいました。お支度を調えてあります」 声を掛けられて、馬車から降りた岬の前にいたのは、洋服を着た毛並みの良い犬だった。人語を話し、執事然と振る舞う犬に驚く岬だったが、それくらいで驚いていては、父親の話に出て来た熊には立ち向かえないと思い直す。 「分かったよ。ありがとう」 丁寧にお辞儀を返して、岬は微笑んだ。
用意されたバスルームでは、猿が香油を運んで来た。衣服を用意していたのは先程と別の巻き毛の犬で、置いてあるドレスに困惑しながらも、岬は袖に手を通した。いたいけな犬に困った顔をされるのには勝てそうにない。
「ご主人様がお待ちです」 案内されるままに、大広間に向かう。豪華絢爛、贅を尽くされた大広間のテーブルの正面には大きな熊が座っていた。
(つづく)
拍手ありがとうございます。元の話はもちろんあれ、です。(2/21PC編集)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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