※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「青葉さん」 不意に名前を呼ばれて、青葉弥生は立ち止まった。三杉に頼まれた医薬品を届けに時折合宿所を訪れる彼女であったが、そう呼ばれたことはこれまでなかった。たいていが「三杉さんの彼女さん」か「あんた」「お前」「三杉の女」呼ばわりであった。前者はともかく、後者はプライドの高い彼女には堪え難かったが、嘆かわしいことに、そう呼ばれる方がここでは圧倒的に多い。それが、きちんと名前を呼ばれたことに驚きながら、振り向くと、そこには岬太郎が立っていた。なるほど、彼ならばそんな無作法な呼びかけはしまい。 とは言っても、岬に話しかけられたのは初めてであり、弥生は不思議そうに首を傾げた。 「何かしら?」 「ごめん、たいしたことじゃないんだけど・・・おすすめのチョコレート屋さんってある?」 突然の質問に、エレガンスがモットーの弥生の足も止まる。 「あ・・・別に欲しい、とかじゃないよ。妹に聞いてほしいって言われて」 古なじみは岬の家の事情をみんな知っている。それは弥生も同じことで、なるほどと納得した。おそらく、妹は好きなチョコレート屋を聞いたのに違いない。その兄にプレゼントする為に。 「そうね、〇〇ホテルのチョコレートは美味しいわよ。その時期に注文しないと食べられないもの」 母親との共同出資だろうから、と弥生は遠慮なく最高級のお勧めを話した。自分にまで聞くのだから、何人にも声をかけているのだろう。その中から好きな情報を選べば良いのだ。 「ありがとう」 微笑んだ岬だったが、実は後ろめたくてならない。確かに妹が聞いてきたのは本当だ。そして、妹にはゆかりから聞いた、チェーン店の名前を答えることにした。 弥生の話を聞いている内に、そんなに美味しいのなら、食べさせてあげたくなったのだ。喜んでくれそうな相手に。 きっと岬からのチョコレートなら、どんなものであっても喜んでくれるに違いない。それでも。
せっかく意を決してプレゼントするのだから、最高のものを。 どうせなら、喜んで欲しい。どうせなら、嬉しい顔が見たい。
そんな考えが岬の頭をよぎった。そして、何となく幸せな気分になってしまった。チョコなんてあげて、いい気にさせるのもしゃくだけれど、でも、毎年あげたくなる女の子の気持ちも分かるような気がする。
青葉さんが早く去ってくれていて良かった。つい笑顔になってしまった岬は、一人胸を撫で下ろした。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 2月といえば、です。珍しい人に登場してもらいました(笑)。彼女は3月ですけれど。(2/5PC編集)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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