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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
千夜一夜(9)
※二次創作です。原作引用ある割りに女性向け表現含みます。苦手な方はご注意下さい。大丈夫な方もどうか寛容な心でお入り下さい。
「突然ごめんね」
どのみちオフ。ランニングは中断して、二人で話す。久しぶりの日本語が何だか懐かしく、岬の優しい声は耳に心地よい。
 岬は画家の父親の仕事の都合でフランスにいる、と言った。
「しかし、びっくりしたぜ」
まさか、こんな異国の空の下で。夢にまで見た相手に会えるなんて。
「元気にしてたか?」
そんなありきたりの言葉しか出てこない。心配したとか会いたかったとかあの時さらってしまえば良かったとか、不意に飛び出しそうになる言葉を封じ込めた。
「でも、よくここまでたずねてきてくれたな」
せっかく訪ねて来てくれたのに、不安にさせたくはなかった。
「うん。今ちょうど夏休みだし、フランスにきて三年目、やっと言葉も何とか通じるようになったしね」
三年。あの夏から。そう思うと、確かに長い間だ。それなのに、あの夏の記憶は色あせなかった。一緒に戦った岬のことも。
 相変わらず華奢で儚げな岬。さっき抱きしめた時は勢いだったが、自分の心が痛くて、まともに顔も見られない。
 岬の笑顔を見る度に、心の中のどこかで針が動く。ちくりという痛みとはね上がる心拍数。
「そうか、もうそんなになるか。なんの連絡もないから、それでおれも心配してたんだぜ。でもドイツとフランスは陸つづきだ。日本にいくよりは、ずっと楽にこられるものな」
「うん」
本当はそうじゃないことを俺が一番よく知っている。同じヨーロッパ、イギリスにいても、全然便りのないうちの両親。
「それにフランスのサッカー雑誌にも若林くんのことがのっていたんだ。それを読んで来てみようと思ったんだ。すごい活躍をしてるみたいだね」
岬は優しく微笑むと俺を少し見上げた。木漏れ日の下、多分俺の方が眩しそうな顔をしている。
 岬はほんの数語、微笑みで自然に心に寄り添って来る。この見知らぬ国で張っていた片意地がみるみる溶けてしまう。
「いや、まだまだだ。活躍といってもまだ二部のチームだしな。でも18までには絶対一部のプロブンデスリーガにデビューしてみせるぜ」
「うん、期待してるよ」
三年前のわずかに共有したあの時間に戻ったみたいに、俺と岬は笑い合った。小学生の頃、あまり話す機会がなかった割に、話すと長く話をして、楽しかった覚えがある。

(つづく)

例の巻を引っ張り出しました。この時期の岬くんは本当に可愛いです。
いや、今だって可愛いんですが。
(12巻で「ボクは岬太郎」を読み返した時もやられましたけど・・・)
でも、この西ドイツ訪問、読み返した時に、若林くんのリラックスし切った顔にも大苦笑。
あんたら、そんなに仲良かったか?と聞きたくなるくらいの良い表情でした。
お持ちの方は是非ご覧下さい。

from past log<2008.10.28>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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