※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「岬ならどこに行っても大丈夫だ」 そう言われた時、胸が小さな音を立てた。どうしてか分からないけれど、若林くんはいつも僕を信じてくれる。あの時もそうだった。
明和との決勝戦、確かにラストゲームだから、という気持ちもあったけれど、みんなが信じてくれているのは、僕の力になった。迷惑をかけたらどうしよう、と不安なまま上げた目を、みんなの目が見てくれていた。頑張ろう、僕はまだ頑張れる、と心を奮い起こした。 順番に見渡して、ふと若林くんと目が合った。自分の怪我だって痛いのに、僕を信じる、と言ってくれた。親しく話したこともあまりないから、余計にその言葉は信じられる気がした。その信頼に応えたいと思った。
試合が終わった瞬間、若林くんは僕の方に走って来てくれた。 「俺達は勝ったんだ!」 そう言って、満面の笑顔の若林くんは僕を助け起こしてくれた。肩を貸してくれた若林くんは、僕にしか聞こえないような声で言ってくれた。 「ありがとうな」 それは、若島津のゴールを阻止したことへの言葉だった。でも、頑張ったな、と言われている気がして、嬉しかった。
それからしばらく経って、若林くんと河原で会った。一度目は偶然、二度目は手紙をもらった。もうすぐ、みんなとお別れだと思うと、淋しくなる。二度と忘れないような思い出をくれた土地だった。思い出以外には持って行けないから、せめてその景色を目に焼き付けたいと思っていた時だった。 「泣いて良いんだぞ」 涙ぐんでいたことも見透かされていたらしい。見なかった振りで胸を貸してくれる若林くんは、とても温かかった。
弱っている時に、若林くんはいつの間にか側にいて、僕を慰めてくれる、そんな気がした。
手紙で呼び出されたのは、南葛市を離れる数日前だった。いつもながら、荷物はほとんどない。でも、その荷作りする手を時々止めたい気分だった。そうして、時間が止まる訳はないのに。
僕が着いた時、若林くんは既に着いていた。しばらくの沈黙の後、若林くんは切り出してきた。 「お前、絶対ここに戻って来いよ」 「え?」 「絶対、ここに戻って来いって言ったんだ」 若林くんは、どうしてこんなに僕のことが分かるんだろう。「ここに来い」ではなく、「ここに戻って来い」という言葉が、こんなに嬉しいとは思ってもみなかった。 「ありがとう」 次に行くのは九州だけど、いつかまたここに戻って来るような気がした。涙も落ち着いて、やっと笑えた僕に、若林くんがかけてくれたのが、大丈夫だな、という言葉だった。気遣いでもお世辞でもなくて、そう思ってくれていることはよく伝わった。 「若林くんって・・・」 「ん?何か言ったか?」 「うう・・ん、何でもない」 僕の欲しい時に欲しい言葉をくれるんだね、と僕は思った。それがどうしてなのか分からないけれど、若林くんの言葉が心に響く理由が分かった気がした。
また会いたい、と思った。
いつか、また会えるような気がした。
「じゃあ、またね」 「ああ、じゃあな」 若林くんは何か言いたそうな顔のまま、小さく手を振った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 昨日も遊び忙しくて、今朝電車更新です。 小学生の河原シリーズ、とでも言うべき話の岬くんバージョンです。 あの岬くんが、ドイツの若林くんに会いに行ったのは、やっぱり何か感じるものがあったような気がします。そういうモヤモヤをぶつけてみました。
拍手お礼: さくら様、いつもありがとうございます。 嬉しいことに、色々な方にお作を頂いております。自分の技量のなさが際立ちます。・・・どんなMプレイですか。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。そういえば、もうすぐ55000Hitです。踏んでしまわれた方、お知らせ頂けると嬉しいです。(PCは専用画面が出ます) (PC編集1/18)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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