※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 生まれてこのかた、ラブレターなんて書いたことなどなかった。それでも、あいつはもうすぐ行ってしまう。
『岬へ 話がある。明日4時に、河原で待っている。 若林』
そう書いて、アパートのポストに放り込んだ。来てくれるかは分からない。俺の前で泣いたことを、恥ずかしがるかも知れない。
それでも、一言でも伝えたかった。
もし、岬が来なくても大丈夫なように、ボールを持っていつもの河原に向かった。少し気負っていたのか、河原に着いた時、腕時計は3時を示していた。どちらにしろ、練習をしに来たんだから、と俺はボールを蹴り始めた。ぽんぽん、とボールの弾む音は同じなのに、まるで違ってみえる。それだけ、緊張しているのだ、と自分でも気付いていた。 数日前、俺は岬のことが好きになった。好きになった、というよりも、好きだと気付いた、の方が正しいかも知れない。泣いていたのが嘘のように微笑む岬に、胸が痛くなった。
「若林くん、もう来てたの?」 「み、岬・・・」 土手の階段を岬は駆け下りてきた。昨日のことなどなかったかのように、明るく微笑んでみせる。 「この前はごめんね。みっともないところを見せちゃって・・・」 「いや、気にするなよ」 そこで会話は途切れてしまう。元々岬と俺はそう話をする方でもない。周りににぎやかな連中が多くて、話していることが多い。 「それで、若林くん、話って何?」 ボールを置いて、座った俺の隣に、岬も腰を下ろした。まっすぐに俺を見つめてくる瞳はもう揺れてはいない。いつもの強い眼差しで、岬の決意を物語るようだった。 「お前、絶対ここに戻って来いよ」 「え?」 「絶対、ここに戻って来いって言ったんだ」 俺の言葉に、岬はすごく不思議そうな顔をした。繰り返してやったのに、まだ不思議そうな顔をしている。 「どうした?」 「あ、ごめん。若林くんがそんな風に言ってくれるとは思ってなくて・・・若林くんって大人っぽいし」 そう言う岬の声と顔は確かに幼いが、口調は十分に大人っぽい。確かに、岬も俺も感情を抑えるようなところがある。大人のフリをしているところがある。だから、その仮面の下は傷つきやすいこともよく知っている。 「だから、お前の笑顔にだまされないんだぜ。・・・辛かったら、泣きに来いよ」 「もう、それは言わないでってば」 ふざけたつもりはないのに、岬は殴るフリをする。1回、2回、3回・・・の後、俺のシャツを掴んだ。顔を伏せたまま、小さく呟く。 「でも、ありがとう」
本当は、好きだ、と言うつもりだった。それでも、隣に居る岬を抱き寄せて、座っているだけで、胸がいっぱいだった。まだ、何もしてやれない。こうして、側にいても、涙を拭わせてももらえない。
それでも、いつか。
二人で見た真っ赤な夕焼けを、たぶんずっと忘れないだろうと思った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 「夕焼け」の続きのような話になりました。 小学生の二人ってやっぱり好きだな、としみじみと。
拍手お礼: なお様、いつもありがとうございます。 一郎さんの発言はポイントだったので、気付いて頂けて嬉しいです! 原作Jrユース編の後、「今度もまた自分の納得のいく富士山はかけないかもしれない」と 言っているのですよ、あの親父は。 ・・・じゃあ、何故引っ越した。本当に芸術家は理解不能です。 でも、小学生の二人に萌えて頂けて嬉しかったです。
以前のものにまで、拍手を入れてくださった方、ありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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