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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
千夜一夜(7)
※二次創作です。同人的表現を含みますので、苦手な方はご遠慮下さるよう推奨いたします。


昨日の続きです。
「岬、また転校するんだって?」
約束通り、遊びに来た岬に尋ねた。井沢から聞いた時には信じられなかった。コーチに聞いても、まだ。まだ、全然親しくなっていない。
「うん」
岬はこっちが拍子抜けしそうな程あっさり言った。
「今度はどこに行くんだ」
「九州だって」
静かな声色に、却ってどきっとさせられた。平静を装っているが、とてもそんな風には見えない。
「なあ、岬」
「なあに?」
岬が普段通りに見える顔で振り返る。愛くるしい顔には動揺の色ひとつない。
「うちに住まないか?」
何故そんなことを言ってしまったのか分からない。岬は、目をぱちぱちさせた。俺の言ったことがよく理解できない、そんな顔だった。
「俺の家には空き部屋がたくさんあってな。お前一人増えても大丈夫だ」
岬は俺を見つめた。目を見開いて、いつもよりも大人っぽい表情。岬が一人でいる時に浮かべる、たぶん本当の表情。淋しそうで、少し達観しているような。
「ねえ、若林くん、同情なんかしないで」
岬は声が高い。それを、押し殺したような声が響いた。
「うちは両親ともイギリスでな。兄貴達も家にはいない。岬が来てくれたら嬉しいと思う」
本当のことだ。だから、俺のまわりには本当は誰もいない。
「そんなことできっこないよ」
感情を抑えた声は、かえって熱さや激しさを感じさせた。聞いているこちらが苦しくなるような、悲しい声。
「俺がいてほしいんだよ。岬みたいな友達は初めてなんだ」
岬がいてくれたら、どんなだろう。毎日サッカーして、他愛のないことを話して、笑って、一日が暮れる。子供みたいだと言われても良い。実際に俺達は子供で、それ以上ではない。むしろ、これまで子供であることを抑制されてきた。他の奴には分からない。言えないし、言わない。
「何でそんなこと言うのさ・・・やっと諦めたのに」
岬は下を向いて、呟いた。この独白の意味を分かるのは、岬と同い年では確かに俺くらいだったかもしれない。だから、俺は岬と一緒にいたかった。俺が一緒にいたくて、一緒にいてやりたかった。
「泣かせるつもりなんかなかったんだよ」
言った俺に、岬は顔を上げて向き直った。
「泣いてなんかないよ。でも・・・そうできたら良かった」
岬の顔は微笑んでいたが、岬の小さな身体にはどれだけの哀しみが、痛みがこもっているのかと思った。
「さよなら、若林君」
岬はそのまま背中を向けた。どんどん小さくなる背中はわずかに震えているようにも思えた。

(つづく)

今他に書いている話(「僕にできること」)と完全に裏表になってしまっています。
ネタがないのか、真。
あと、今日になって今更ながら12巻読みました。
何か一郎と考えがかぶっているところがあって、むかつきました。
昨日に続いてショックです。

from past log<2008.10.25>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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