※二次創作です。同人的表現を含みますので、苦手な方はご遠慮下さるよう推奨いたします。
昨日の続きです。 「岬、また転校するんだって?」 約束通り、遊びに来た岬に尋ねた。井沢から聞いた時には信じられなかった。コーチに聞いても、まだ。まだ、全然親しくなっていない。 「うん」 岬はこっちが拍子抜けしそうな程あっさり言った。 「今度はどこに行くんだ」 「九州だって」 静かな声色に、却ってどきっとさせられた。平静を装っているが、とてもそんな風には見えない。 「なあ、岬」 「なあに?」 岬が普段通りに見える顔で振り返る。愛くるしい顔には動揺の色ひとつない。 「うちに住まないか?」 何故そんなことを言ってしまったのか分からない。岬は、目をぱちぱちさせた。俺の言ったことがよく理解できない、そんな顔だった。 「俺の家には空き部屋がたくさんあってな。お前一人増えても大丈夫だ」 岬は俺を見つめた。目を見開いて、いつもよりも大人っぽい表情。岬が一人でいる時に浮かべる、たぶん本当の表情。淋しそうで、少し達観しているような。 「ねえ、若林くん、同情なんかしないで」 岬は声が高い。それを、押し殺したような声が響いた。 「うちは両親ともイギリスでな。兄貴達も家にはいない。岬が来てくれたら嬉しいと思う」 本当のことだ。だから、俺のまわりには本当は誰もいない。 「そんなことできっこないよ」 感情を抑えた声は、かえって熱さや激しさを感じさせた。聞いているこちらが苦しくなるような、悲しい声。 「俺がいてほしいんだよ。岬みたいな友達は初めてなんだ」 岬がいてくれたら、どんなだろう。毎日サッカーして、他愛のないことを話して、笑って、一日が暮れる。子供みたいだと言われても良い。実際に俺達は子供で、それ以上ではない。むしろ、これまで子供であることを抑制されてきた。他の奴には分からない。言えないし、言わない。 「何でそんなこと言うのさ・・・やっと諦めたのに」 岬は下を向いて、呟いた。この独白の意味を分かるのは、岬と同い年では確かに俺くらいだったかもしれない。だから、俺は岬と一緒にいたかった。俺が一緒にいたくて、一緒にいてやりたかった。 「泣かせるつもりなんかなかったんだよ」 言った俺に、岬は顔を上げて向き直った。 「泣いてなんかないよ。でも・・・そうできたら良かった」 岬の顔は微笑んでいたが、岬の小さな身体にはどれだけの哀しみが、痛みがこもっているのかと思った。 「さよなら、若林君」 岬はそのまま背中を向けた。どんどん小さくなる背中はわずかに震えているようにも思えた。
(つづく)
今他に書いている話(「僕にできること」)と完全に裏表になってしまっています。 ネタがないのか、真。 あと、今日になって今更ながら12巻読みました。 何か一郎と考えがかぶっているところがあって、むかつきました。 昨日に続いてショックです。
from past log<2008.10.25>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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