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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
千里眼
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 みんなとお見舞いに来てくれた時に、テレフォンカードをくれたきり、若林くんは来てくれない。
 病院では携帯禁止だから、本当に有り難い。けれど、その当人にはまだお礼も言えずにいる。そのうち来てくれると思っていたから、今まで電話しなかった。
 でも、やっぱりお礼も言わずにいるのもどうかといいわけを決めて、若林くんの携帯に電話をかけた。
「若林くん?」
繋がった途端に、声を出してしまって・・・まるで、焦っているみたいだと恥ずかしくなる。
「岬、電話ありがとう」
電話の向こうから聞こえる声は何だか懐かしい。しばらく会っていないもの。僕のこと好きだ、って言ったのは君のくせに。
「だって、こっちから電話しないと、連絡取れないから」
責めるつもりはない。淋しいって言うつもりも。でも、声音に出てしまったのか、若林くんはごめんな、と低く呟いた。
「淋しくはないんだよ。みんなお見舞いに来てくれたし。それに僕、淋しがりでもないし」
付け加えた僕に、若林くんはふふ、と小さく笑った。
「それなら良かった」
そう、淋しがったことなんてなかった筈なんだ。僕は何処でも僕でいられたし、いちいち淋しいなんて落ち込んでいたら、身がもたない。それに、この電話だってこそこそかけている程、昼には母さんや美子ちゃんがついてくれている。

 でも、若林くんはいないんだ。

「岬、淋しいのか?」
若林くんの口調にはいつものからかうような風はない。真摯に案じてくれている様子に、胸が疼いた。やっぱり、すごく心配かけてるんだ。
「まさか。僕は大丈夫」
受話器を握る手に力が入る。心細さが声に出てしまわないように。お見舞いに来てくれる人に自然に笑えるようにはなったけれど、若林くんには気付かれてしまいそうだ。まるで、千里眼のように、君は僕のことを見抜いてしまう。
「岬」
「ん?」
「これから、そっちに行って良いか?」
若林くんの言葉に、一瞬心が冷えた。僕はそんなに不安そうな声を出した?
「僕は大丈夫だってば」
「そうじゃなくて・・・声聞いたら、会いたくなってさ」
東京から仙台までどれだけかかると思ってるんだよ。言いかけた僕に、電話の向こうの若林くんが静かに問う。
「行って良いか?」
「駄目だよ。練習サボる気なの?」
若林くんのことだから、その辺はうまく処理しているに違いない。でも。
「・・・会ってくれるか?」
受話器を通して聞こえてくる若林くんの声は、じわじわと僕の心に染みて、熱くする。胸も目も熱くて、僕は頷くしかできない。
「うん」
会いたいよ、僕も。言わなくても、また伝わってしまっている気がした。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
携帯版のテンプレートを設定し忘れていたので、慌てて設定しました。
・・・なんだか、ものすごく重くなりました。PC版も重いし、困ったものです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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