※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 先日の宝物絵から更に妄想してみました。 フランスに行くまでハロウィンなんて知らなかったけれど、日本でも最近は10月になると、オレンジ色が目立つようになった。 「この時期って端境だから、飛び付いた感じだよな。商魂逞しすぎ」 井沢はそう言うけれど、フランスでは10月には当たり前の光景だったから、あまり違和感はない。 「ちょうど寒くなる時期だから、明るくて良いと思うよ」 カボチャのランタンが飾られた商店街は町ごとデコレートされたみたいで可愛い。 「そんなこと言ったら、石乃湯が何か仕出かしかねないぞ」 滝くんの鋭い突っ込みに、何をされるんだろう…と少しだけ想像してみたくなった。
一度だけハロウィンの衣装を着た。 去年、魔法使いの大きな帽子にケープを羽織って、ノックした。 「Trick or Treat?」 尋ねると、若林くんは少し驚いた顔で、 「とりあえず入って」 と勧めてくれた。 「日本に帰ることになった。次に会うのはきっと全日本だね」 電話でそう話した相手が、急に訪ねて来るとは予想しなかっただろう。 「びっくりした?」 「ああ。…次は全日本って聞いてたのに」 そう言いながらも、若林くんは温めたミルクを用意してくれた。 「これで良いか?」 なんて真面目な顔つきで、言ったのには笑ってしまったけれど。 「こっちにいる間にしてみたかったんだよ」 僕らしくはない冗談だけど、この大きな帽子なら、表情だって隠せるから。 「似合う?」 大きなつばを持ち上げてみせた僕に、若林くんは笑ってくれた。 「前もって言ってくれたら、菓子を用意したのに」 若林くんのお家にお菓子がないことは前から知っていた。僕が来る時にだけ買っておいてくれることも。 「お菓子がないならしょうがないね。じゃあ、悪戯するよ」 「悪戯するのか?岬が?」 うたぐり深い若林くんに、僕は頭から外した帽子を思い切り被せた。 「わっ」 大人用の大きな帽子を深く被せて、目隠しした若林くんに軽くキスをした。 「み、岬ィ…」 帽子を取り払った若林くんに追い付かれないよう、走って逃げた。
悪戯。悪い戯れ。 きちんと打ち明ける勇気はないけれど、別れの挨拶はしたかったんだ。
南葛商店街で買い物をして、家に帰る頃には辺りは暗くなっていた。結局南瓜を買ってしまったから、今日は炊いて、明日はシチューに入れて…考えていた時に、ドアホンが鳴った。 「はい、どちら様…」 窓の隙間から見て、声が出なくなった。見覚えのある三角の帽子。去年置いて逃げた、悪戯の相方。 「Trick or Treat?」 入って来たのは、若林くんだった。
「コート貸して。ハンガーにかけるから」 漆黒のコートの下はタキシードで、吸血鬼の衣装らしい。和室には合わないけれど、若林くんにはものすごく似合っている。 「急にどうしたの?チームは大丈夫?」 「ストで市内の交通がストップして、休みになった」 座布団なのが申し訳ない程、隅々まで念の入った格好で、若林くんは腰をおろした。 「お茶しかないけど」 熱い緑茶を出した。…何を言われるのかは分かっている。さよならも言わずに、告白もせずに、逃げたのは僕だ。だから一向に落ち着かない。 「じゃあ、悪戯するぞ」 お茶を飲み干した若林くんはゆっくりと立ち上がり、僕を引き寄せた。 「んっ…」 深く口付けられて、息も出来ない。軽い悪戯ではないキスを何度も繰り返されて、僕はその場に座り込みそうになる。力の抜けた僕の身体を支えて、覆いかぶさるように、キスは続く。 「俺が眠れなかった分、眠らせないから」 貪欲過ぎる吸血鬼は僕の首筋を吸いながら、そう呟いた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。
今日は萌えるままに、2時間位で書いたので、とんでもない話に。 この時期はお菓子を持っておきましょう、という教訓話…ではありません。
先日更新控え目にすると言っておきながら…萌えが止まらないんです。 本当にどうにかして下さい。
from past log<2009.10.29>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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