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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
プラットホーム B
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 来た時に言っていた通り、岬は三日で帰ると言う。一刻すら惜しくて、三日間、片時も離れはしなかった。
「じゃあ、若林くん、ありがとう」
小さなバッグを手に、少しだけ頭を下げる岬に、俺も慌てて上着を引っ掛けた。
「駅まで送っていくから」
「大丈夫だよ。僕、一回来たところはすぐに分かるから」
岬ならそうだろう。明るい店の前や街灯の多い道筋は難しかったが、岬は苦もなく覚えたようだ。
「送るって」
「いいよ。気を遣わないで」
玄関まで歩きかけていた岬を引き留めた。だが、岬は承知しようとしない。
 本当なら、家まで送って行きたいくらいだ。それこそ寝る時に、俺の顔しか思い浮かばないくらいに。
「気なんか遣ってないぞ」
そうじゃない。そうじゃなくて。
「買い物でもあった?」
根負けしたらしく、岬は俺が用意をする間も待っていてくれた。
「いや、そういう訳でもない」
一歩、二歩近寄る。できることなら、抱き締めたい。きれいな線を描く身体に、雪のような肌に触れたら、お前はどう言うんだろう?
 俺なんか嫌いだと、泣くかも知れない。それが何より怖いくせに、お前が欲しくて、一歩また一歩。
「そうじゃなくて、少しでも一緒にいたいんだけどな」
的確な言葉を見つけるのには時間がかかった。岬を驚かせないよう、少しずつ岬の心に歩み寄る。
「・・・若林くん」
岬は振り返って、優しく微笑む。
「ありがとう。迷惑がられてなくって安心した」
まさか、迷惑がるなんてとんでもない。俺こそ、お前が困らないのなら、すぐにでも毎日だってお前に会いたい。
「俺はいつだって岬に会いたい」
つい口をついて出た言葉に、岬が優しく微笑む。
「ありがとう。嬉しいよ」

 プラットホームで、電車が来るのを待った。少し遅れているようだと伝えると、岬は少し嬉しそうな、寂しそうな表情を浮かべた。
「電車、来なけりゃ良いのに」
半ば本心で、ふざけてみせた。岬はおかしそうに笑ったけれど、まだどこか寂しそうだった。遠くを見ているようでどこも見ていない眼差しに、少しずつ苦しくなっていく。

 行くな  もう少し一緒にいてくれ

 つい口をついて出そうになる言葉を呑み込みながら、岬を見ると、岬も辛そうな顔をしていた。
「若林くん、やっぱり・・・」
所在なさげな様子に、三年前のことを思い出す。岬が行ってしまうと聞いて、何だかとてももどかしかった。はっきりとは分からない気持ちが渦巻くようで、癪で見送りには行かなかった。
「三年前は間に合わなかったから、な」
「・・・もしかして、見送りに来てくれたの?」
大きな瞳で見上げられて、あの時の気持ちが蘇る。もし、岬が寂しそうにしていたとしても、どうにもできない自分が悔しかった。動かないで後悔するくらいなら、動いて後悔すべきだと常々思っていた俺の足は今までない程重かった。それでも、寂しげな後姿を見るのは怖いくせに、一目その姿を見たくて、焼き付けたくて、仕方なかった。

「今日は間に合ったから、言える」
白い手を、そっと握った。俺の手にすっぽりと収まる小さな手を、両手で包み込んだ。
「また来てくれよ」
もう、あの時程、子供ではない。岬がどこかに行ってしまっても、追いかけて、その涙を拭ってやれる。この小さな背中を見失わないで、抱き締めてやれる。まだ、言葉にすることは難しいが、少しでも伝わってくれれば、と柔らかい手をもう一度握った。
「うん」

 車窓のガラス越しに見える白い顔は微笑んでいて、俺は岬がまた来てくれることを確信した。

(おわり)

「プラットホームA」

拍手ありがとうございます。

ツレの友達から静岡名物安倍川もちを頂きました。
静岡♪甘いもの♪とはしゃいでおります。
はしゃいでいる理由は説明できませんでした・・・。

個人的事情により、来週から更新ペースを落とします。
自分でも予想外なので、うまく対応できるかしら。

from past log<2009.10.15>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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