※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 長くなりましたが、次回最終回です。 5
派手な魔法使いには注意しろ、とヒカルは言った。だが、助勢は欲しいところだった。立ち止まったワカバヤシ王子は、ジュンのところに戻った。 「・・・よく聞こえなかったから、もう一度大きな声で言ってくれ」 「・・・仕方ないね。僕を解放してくれたら、手を貸すよ」 「何に?」 聞き返したワカバヤシ王子に、ジュンは付け加える。意識のあるままで、動きを封じられるのは身体の弱いジュンには辛いことだった。 「ピエールを懲らしめるのに、さ」 「ミサキを助けるのは手伝ってくれないのか?」 「ああもう、手伝うよ」 ワカバヤシ王子の質問に、ジュンはいらいらと言い放つ。白い頬は既に青白く変わり始めていた。 「本当に?」 「本当だよ」 ジュンが頷くのと同時に、ワカバヤシ王子はジュンを取り巻くいばらのつるを切ったが、その時にジュンの手に痛みが走った。 「な、何をしたんだ」 「カルツに針を借りて来たんだ。約束を守る針、を」 カルツの針は、普段は普通のものだが、約束をかければ、それを縛る力を持っていた。破れば、たちまち相手の心臓に突き進んでいく。王族で魔法を使う者は少ないが、カルツはそのごくまれな例外で、しかも他の誰も知らない秘術を編み出していた。 「・・・カルツ王子の針か」 話を聞いたことはあった。しかも、先程の痛みは針を刺されたせいだろう。ジュンはため息を一つ漏らした。 「そんなことをしなくても、薔薇魔法使いは約束を破ったりはしないものだよ。まあ、良いけれど」 「じゃあ、信じても良いんだな」 ワカバヤシ王子はすっかり諦めた様子のジュンを従えて、更に奥へと進み始めた。
ジュンの案内で、それからまもなくピエールの姿が見えてきた。大きな薔薇と化したマントの中で眠るミサキを、ピエールは静かに眺めている。こちらも紅薔薇色の装束で、すぐに薔薇魔法使いと知れた。 「ピエール、よくも僕まで・・・」 「あんな子を殺せなんて言うからだ。お前は鬼か!」 ジュンは反論をまくし立てるピエールを睨み付けると、杖を一振りする。黄色い花びらが舞い、ピエールの周囲に降り積もっていく。 「花嵐」 ピエールの杖の動きに合わせて、風が起こった。強い風は竜巻のように花びらを撒き散らす。 「ちょっと待てよ、ミサキが危ないだろ!」 ワカバヤシ王子は二人の横をかいくぐり、ミサキ王子を包む大輪の薔薇に歩み寄った。真紅の薔薇の色を映し、岬の白い頬は薄く染まっている。 「ここまで来たが…どうしたら良いんだ?」 ワカバヤシ自身が身を呈して守らなければ、あの二人の魔法使いの乱闘に巻き込まれる恐れもある。だが、どうやって?逡巡していたはずのワカバヤシ王子は、何気なくミサキ王子を眺めた。白い瞼に、長い睫毛。ゆるやかに曲線を描く頬もきれいで、いくら見つめても足りない。 「生きてる、よな?」 確かめるために近付くと、静かな寝息が聞こえた。周囲は少し温度が低かったものの、花びらのように優しい唇も僅かだが、開いている。 「ミサキ?」 呼んだら今にも起きそうな寝顔に、ワカバヤシ王子の心は落ち着かなくなる。周囲で花びらが舞う中を、間近に庇っているだけだったのに、触れたい気持ちが高まって来る。
(つづく)
あまりに眠くて、ゆっくりする気だったのですが、叩き起こされてしまったので、 ついでに更新を。
連載は明日で最終回です。
from past log<2009.9.28>
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|