※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 最終回。 5
「何言ってやがるっ。お前も見ただろ、あいつが出て行くのを」 若島津は日向の目の前で背を向けた。長い髪が背に流れているのを、返されたボールが廊下に転がっていくのを、ただ見守るしかなかった。 「でも、若島津は待ってるよ」 確証はない。それでも、若島津が全日本の試合を見に来ていた、というのは聞いていた。若島津とて一度決めたことを覆すような男でないことは岬もよく知っている。ただ、日向小次郎は若島津にそれをさせられるということも分かっていた。 「あいつは別の道を行ったんだ。わざわざ呼び戻すことはねえ」 もし、迎えに行って拒まれたら、自分はどうにかなってしまう気がした。もしかしたら、若島津を強引に襲ってしまうかも。日向はその有様が容易に想像できる気がして、首を振った。 「小次郎」 襟首を不意に掴まれて、日向は顔を上げた。高校時代、自分の敵として戦っていた時の岬太郎がそこにいた。 「じゃあ、僕からお願いするよ。若島津を迎えに行って。・・・若林くんが壊れる前に」 これが恋なのだ、と日向は目を見開いた。あの冷静な岬が、苦しい程掴んでくる力に、感動した。負傷で一線を退いている若林が、このワールドユース大会で戦っていくのはなまやさしいことではない。岬が日向と若島津のことを案じていない訳はないが、それよりも利己的な動機を見せたことに、日向は感銘を受けずにはいられない。 「岬、若林と・・・」 「ああ、そうだよ。だから、君達のことも分かってて、恥を忍んで頼んでる」 負けた、と日向は思った。二人をこうして見れば、愛し合い、思い合っていることが分かる。自分は言われてみれば確かに若島津が好きなのには違いない。だが、それだけのことをしてやったかどうか。 「俺も負けてられねえな。四の五のは言わさねえで連れて来てやる」 なおも照れ隠しをやめない日向に、テレビで見る雷親父みたいだな、と思いながら、岬はつられて笑った。
それからは、考えている間もなかった。日向の母親の入院に、若島津は自分の契約金を差し出した。日向が感動しなかった訳がない。一度突き放されたことで、余計に思いを自覚せずにはいられなかった。思えば岬は日向が思ってもないことを言わないよう圧力をかけたに違いない。もっとも、日向が思ってもないことを言ったとて、若島津は笑って頷くに違いないのだが。 「おれは、おまえをどんなことをしてでもジャカルタに連れて行く」 言い切った日向に、頷く若島津は目元を潤ませていた。その表情が何とも心に残って、日向はこれが恋か、と思ったのだった。
「みんなを心配させた分土産も持ってきた」 そう言って手を引いた日向に、若島津はその照れ隠しを含めて、日向さんらしい、とまた微笑んだのだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 これは、さくら様のリクエスト、というかネタ振りで、「源岬に触発され恋に気付く日向くん」でした。 小次健ってよく考えたら書いたことないな、とこんな風になってしまいました。 しかも、途中からファイルがなくなっている・・・書き直したら、更にひどいことに。 岬くんの行動は予定外でした。 でも、日向くんとの会話を書くのは楽しかったです(またもや、私だけ) さくら様、遅くなった上にグダグダですみません。 いつもお世話になっているのに、本当に申し訳ないです・・・。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
from past log<2009.9.19>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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