※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
続きものでありながら、書きかけの部分が消滅してしまったので、書き直しました…。 これまでの部分はこちら (1) (2) 
「岬、何が欲しい?」 若林の言葉に、岬は不思議そうに目を瞬かせる。 「何でも欲しい物やるから」 「・・・何、それ?」 喜ばせるつもりが、岬はどうやらそうではないらしい。それどころか、自分を見上げる岬の表情は硬い。喜ぶはずだった岬は、そのままさっさと立ち上がると、若林に頭を下げた。 「若林くん、ごちそうさま」 「待てよ、帰るなよ」 若林の言葉の意味が分からなかった。引き止められた、のは分かっているが、もしかして自分を買収するつもりなのか、と岬は少し憤った。 「だって、晩御飯なんだってば」 断る言葉も自然に荒くなる。手を振り解こうとして、岬は至極真面目な顔をしている若林と目が合った。若林があまりに優しい目をしているので、岬は面食らう。 「だから、食って行けって言ってるんだ」 いかにも当然、という言い方に、岬はため息をついた。 若林の家は大きすぎて、確かに近所で聞く通りのお屋敷だと思った。才能を見込まれた、と聞いてはいるが、小学生のサッカーのコーチに元全日本代表で実業団で長く活躍した選手が来ているというのはその並外れた財力の現れだろう。だから、若林くんはおそらく普通のことを言ったつもりなのだろう、と岬は推測した。おそらく、小次郎が「飯まだなら食っていけよ。たいした物はねえけどな」と言うのと変わらないのだ。ただ、彼我の常識は大きく違っているらしい。 「・・・始めからそう言ってくれれば良いのに」 「言わなかったか?」 「言わなかったよ」 本当は優しいけれど、言葉足らずで、世間知らずで、でも憎めない相手に岬を許してやることにした。悪気があった訳ではないし、何より気遣ってくれたことは嬉しかった。 「ありがとう。じゃあ、ご馳走になっても良いかな。僕一人でご飯食べるの、好きじゃないんだ」 にっこりと微笑んだ岬に、あまり見ていると顔が赤くなってしまいそうだと感じて、若林は目をそらした。 「俺も、一人で食うの嫌いだから。食ってけよ」 兄にさえバカにされるのがイヤで、寂しいと言えないのが、まるで嘘のように心の壁を取り払われてしまう。それ以上に、この小さな友達を何とかして守ってやりたい、笑わせてやりたい、と思う。 もう少しで、帰らないでほしい、と言うところだった。今までの友達は、みんな自分から若林に近づいて来たのに、岬はそうではなく、何が欲しいと聞くとかえって、不快そうな顔をしただけだった。 「・・・じゃあ、一緒に食べてくれる?」 「もちろん」 それが、今は嘘のように岬は若林に向かって微笑んでいた。一緒に食事をする、だけのことを喜んでくれる岬が、ますます好きになった。 「岬、何が食いたい?」 「独りじゃなきゃ何でも良いよ」 「岬」 たったこれだけのことで、嬉しそうな若林を、岬も静かに見ていた。自分の家とは大違いの広い部屋で独りきりの若林の寂しさを垣間見てしまった気がして、とても帰る気にはなれなかった。若林が自分を気にするのは、きっと似ているせいだ。自分が若林を気にしてしまうのも、きっと。 「期待してろよ、下に頼んでくるから」 自分を残して、階下に降りた若林を岬は見送った。それでも、この時間は悪くない。ふと、そう思った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 書き直したら、雰囲気の全然違う話になりました。あれ?? もっと二人がツンツンしている話のはずが…。 まあ、何とか書き終わったので、自分だけはほっとしていますが。
お祭り気分が抜けません。 忙しかったわりに、一人で盛り上がっていたり。 昨日も帰宅してからは岬くんの絵を2枚塗りました。両方とも半ズボンv ・・・誰にも見せられない姿です。
from past log<2009.9.14>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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