※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「若林くん、くっつき過ぎだよ」 いつものように軽く苦情を言っただけなのだが、すぐに数歩離れた若林に、岬は不思議そうな顔をした。普段なら手を繋ぐのは当たり前、歩き辛くなるほどくっついてくる若林が、一度言われた位で離れてくれるのは珍しかった。 「どうしたの?」 かえって不思議そうに尋ねる岬に、若林はにやっと悪戯っぽく笑う。 「どうせだから、目に焼き付けとこうと思ってさ」 相変わらず背筋をすっと伸ばし、静かに佇む姿をもう一度眺めた。 決して岬の姿だけが好きなのではない。優しさも潔さも、強さも弱さも含めて、岬という人間が好きなのだ。ただ、そう言ってしまうには、岬は少々きれい過ぎる。岬がこんなに優美な顔や整った容姿の持ち主でなければ、岬の内面が好きで、岬でなければならなかったことも、もっと簡単に周囲に伝わっただろう。 「何言ってるのさ」 岬は困ったように微笑むと、若林の手を引いた。 「いつも、せっかく一緒にいるんだから、触れたいって言うの君なのに」 岬は、好きだと素直に表現するのが苦手だと言う。それなら、と珍しく引いてみたのだが、思ったより効を奏した。離れてみた岬の指先は、ほんの少し寂しげに見えた。 「じゃあ、触って良い?」 髪のすぐ近く、耳の側をかすめた指が、宙を切る。その指先に、慈しまれる時のことを思って、岬は顔をほのかに染めた。 「許さないって言ったらどうするの?」 「許してもらえるまで説得する」 紳士らしいのか、そうではないのか。堂々と言い切った若林に、岬は小さなため息を落とした。 「・・・君には勝てないや」 いざとなったら、岬など簡単に奪えるくせに、大事に愛してくれる若林の気持ちに、岬はいつも最後には負けてしまう。ひとつ許す度に、奪われていくのは、自分の心。 「それを言ったら、俺はずっと負けてるぜ」 岬の反応を見るために遠ざかったのに、触れたくなって仕方なかった。万が一にも泣かせたくないから、自分の心など簡単に押し殺せると思っていたのだが、それも自信がなくなってくる。 「嘘ばっかり」 頬に触れた指先に、岬はくすぐったそうに笑った。その幸せそうな笑顔に心が震える。今度の作戦はやっぱり自分の方がダメージが大きかったらしい、と若林は悟った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 最近、落書きブログと化していますが、たまには。
以下、拍手お礼
さくら様、いつもありがとうございます。 そうなんです、拍手はああいう展開に。人目につかないのを良いことに好き放題やってます。 あと、早田くんに反応嬉しいです。もうすごい勢いだけで描いてしまったので、 恥ずかしいのですが、笑っていただけて良かったです。 後はそちらで。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
from past log<2009.9.4>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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