※二次創作及び原作・キャラクターへの歪んだ愛・解釈及び同人的表現を含みます。苦手な方はご遠慮下さる方が身の為です。
前回の続き&最終話です。 俺は岬を抱き締めたくなる気持ちを必死で抑えた。こんな苛酷なことに独りで立ち向かっている岬。 「分かった。とりあえず、会社の研究室を押さえる。そこで、親父さんに頑張ってもらおう」 岬を喜ばせるつもりが見え見えの俺の提案に、岬は頷く。 「うん、お願いするよ」 あまりに可愛い笑顔に、更に心が痛くなる。心臓を掴まれるような苦しさに息もできなくなってしまう。 「それでも駄目なら・・・」 自分の心臓の音にイライラする。鎮まれ。うるさい。 「駄目なら?」 聞き返す岬の顔が近い。長い睫毛に縁取られた大きな目も、甘やかな唇もすぐに触れてしまえる近さ。もし触れてしまったら、どうにかなってしまうんじゃないだろうか。目の前のあまりに甘美な誘惑に、俺は観念して目をつぶった。それなのに。 「俺のところに嫁に来い」 つい勢いよく言ってしまった。俺と目が合った岬は一瞬きょとん、としてから、柔らかく微笑んだ。 「うん、分かった」 あまりあっさり返事するものだから、俺の方が驚いてしまう。嫁、って俺言ったよな? 「岬、意味わかってるのか?」 思わず握り締めてしまった手は少し冷たく、俺の手が包んでしまえるほど小さくてすべすべしていた。その手の感触に、さらに鼓動が早くなるのを感じる。岬は手を握られたまま、呟いた。 「うん、若林くんなら良いかと思って。三年前も言ってくれたよね」 岬の言葉に胸を貫かれた。ドキッとする。
三年前、全国大会の決勝戦、勝利を知らせるホイッスルが鳴った瞬間、俺は岬に駆け寄った。反対側のゴールポスト近くで倒れていた岬を見た時、すごく動揺したのを覚えている。このまま目が覚めなくなったらどうしようか。無理に抱き起こして、病院に運んだ。 「そんなに心配しなくても、頭は少し打っただけだから」 コブが出来た、と笑う岬を説得して検査を受けさせた。 「お前のことが好きだから、心配なんだよ。おとなしく検査ぐらい受けろ」 大げさだよ、と笑う岬に他に言葉が出てこないで、つい言い放った。岬は苦笑して、ありがとう、と言ったきりだったので、告白だとは気づかれなかったと思っていた。何も変わりはなかったから。 「あのね、もっと興味本位で見るかと思ってたのに、若林くん相変わらず心配ばかりするんだもん」 岬は俺の目を見つめた。少し色素の薄い双眸に俺の姿が映り、俺は言い知れぬ幸福に酔いそうになる。 「あったかいな、って思った」 俺だけに向けられた微笑みは、予想以上に甘くて可愛かった。 「岬」 愛しさが込み上げてくる。どうしても、岬が欲しいと思った。男であれ、女であれ。 「抱きしめても良いか?」 三年前からずっと思っていた。無邪気でもなく、プライドも高いから、なかなかそんな気にはなれなかったけれど、ずっと抱きしめたかった。今はましてそう思う。 「もう、仕方ないな」 言いながら岬は、俺の肩にコトンと凭れかかってきた。お許しも出たことだから、とすぐに岬を抱きしめた。 「若林くん、苦しいよ」 ここはグラウンドでも相手はチームメイトでもないんだから、俺は腕の力を抜いて、大事な宝物を優しく扱った。 俺の腕の中、岬は少し緊張しているようだった。こんな風に抱き合うのもきっと初めてなんだろう。 困った。渇望は少しでも満たされた時、さらに大きくなるらしい。こうなったらぐずぐずはしていられない。 「とりあえず明日、婚約指輪買いに行って良いか?研究所も押さえるから」 順序が逆でしょ、と言いつつも微笑む岬を見ていると、何でもしてやりたくなる。何より守ってやりたい。それが許される喜びに浸りながら、俺は心の中でちょっとだけ岬の親父さんに感謝した。
(終わり)
毎日こんな変な話を見に来てくださった奇特な方がいらっしゃったら、 厚くお礼申し上げます。がっかり&お約束ですみません。
from past log<2008.10.13>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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