※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 付き合おう、と言われて嬉しくない訳なかった。
同じ学校に通ったことこそなかったけれど、何度も同じチームで戦った。 きりっと引き締まった口元とすごく強い眼差しが印象的なのは、初めて会った時から変わっていない。でも、すごく優しい顔で笑うことも今はよく知っている。 「若林くんは優しいね」 小学校時代、ちょっとしたきっかけで口にした言葉に、若林くんは不思議そうに言い返した。 「俺のこと優しいなんて言うの、お前くらいだ」 確かに口調は偉そうだけど、その眼差しがちゃんと周囲を覆い、守っていることを僕はよく知っている。 「・・・そんなことないよ。きっと、みんなそう思ってるよ」 例えば、誰かを守ろうと思った時、手を差し伸べて庇うくらいしかできない僕と違って、若林くんはきっとその誰かの為に、他に敵を作り、代わりに戦ってでも守りきるのだろう。繰り返した僕に、若林くんは困ったように目をぱちぱちさせた。 「・・・お前って不思議な奴」 その口調は少しもいやではなかった。むしろ、くすぐったいような気がした。
他の友達ほど、接点もない。長く話したことがある訳でもない。それなのに、好きだと言う若林くんの顔を僕は何度も見返した。 何でもない風を装っても、早くなり始めた鼓動は収まる様子もない。
僕だって、嫌いじゃない。ううん、むしろ好きなんだと思う。若林くんが僕を特別だと思った以上に、僕にとっても若林くんは特別だった。
「付き合ってほしい」 女の子じゃないんだから、といつも言っているのに、当然のように持って来てくれる花束は、いつもより大きかった。若林くんはそれを厳かに差し出して、少し真面目な顔をした。背の高い若林くんが花束を抱えている姿は、まるで映画のようで、きっと女の子達が放っておかないだろうに。 「・・・ごめん」 僕は誰とも付き合ったことがない。いつどこに行くかも分からない僕が、誰かの気持ちを受け取って、縛ることなんてできない。 まして、若林くんなら、すぐにでも他の相手が見つかるに違いない。定型文のような説明を始めた僕に、若林くんはじっと見据えて目もそらさない。 「俺ならどこでも、会いに行ってやるぜ」 それは間違いない。今までも若林くんはフランスまで会いに来てくれた。持って来てくれた花が香っている間、いつも若林くんのことを考えた。 「それより、お前の気持ちは?」 若林くんは、相変わらずまっすぐな視線で、僕を逃がしてはくれない。 「…きらいじゃないよ」 僕の気持ちなんか、きっととっくにばれている。国境を越え、そう近しかった訳でもない君に会いに行ったのは、普段の僕からは考えられないことだった。そして、今も高鳴る胸を気づかれないように、気遣っている。 「じゃあ、付き合おうぜ」 「だって、付き合ったりしたら、君僕のこと嫌いになるかも知れないよ」 抱き寄せられて、つい本音が出た。僕は誰とも付き合ったことがない。若林くんみたいな人からしたら、刺激が足りないかも知れない。それで嫌われるよりは、今のまま、特別な友達同士の方が良いかも知れない。 「ならないぜ。俺がお前のこと嫌いになる訳ないだろ」 あっさりと自信満々に放たれた言葉は、若林くんらしくて、説得力にあふれていた。・・・強くて、自信たっぷりで、そのくせ優しい黒い瞳に見つめられて、反論すらできない。 「その代わり、ずっと別れてやらないからな」 「うん」 頷くのがやっとだった。不安や恐れが若林くんの体温に、ゆっくりと溶かされていく。嬉しすぎて笑えないことがあるなんて知らなかった。我ながらぎこちなく笑った僕を、若林くんは優しく包んでくれた。 「好きだぞ」 「うん」 それ以上は言葉にならなかった。どうせ、君には敵わない。好きだよ。万感の思いを込めて、僕を包む背中を抱き締めた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 今週末は忙しいので、携帯から更新です。(次は日曜に)
以下、拍手お礼
なお様、もったいないお言葉ありがとうございます。 おかげさまで、やっと戻って来ました。(まだリハビリ更新中ですが) ・・・そこに反応されるとは、さすが・・・。 そちらは読み専なのですが、なお様のところの二人に会いに、こっそり通っていたりしますv また、そちらにお邪魔しますね。
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from past log<2009.8.28>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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