※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「岬、冷たい茶いらないか?」 南葛SCの練習が終わり、夕方になっても暑さの引かない日差しの中、思いがけない言葉に、岬は声の主を振り返った。ドリブルしながらの帰り道、岬と速度を合わせられるのは翼しかいない。その為いつも翼と一緒に帰っているのだが、今日は家の事情で練習を休んでいる。仕方なく一人で帰ろうとした岬を呼び止めたのは、若林だった。 「お前、俺の家の前通って帰るんだから、たまには寄って行けよ」 えんえんと続く若林家の塀の隣の広い道を、翼と岬は気に入っていた。歩道も広いので、他の場所よりもスピードを出せる場所だった。 「冷たい飲み物ご馳走するぜ」 冷たい飲み物、の言葉に、岬は無意識で息を飲んでいた。暑さに強い上、冷たいものは控えるべきだと自制している岬だが、こう汗をかいた後には、冷たい飲み物も恋しくなる。 「お邪魔しても良いの?」 「ああ、来いよ」 「でも・・・」 若林の家は知っていても、訪ねたことはない。遠慮がちな岬に、若林は怒っているような顔をして、岬の手を引っ張った。 「ここ暑いから、さあ、行くぞ」 「えっ、ちょっと・・・」
岬が躊躇するのも無理はない。修哲小の連中の話によると、若林邸では初心者は迷子になるらしいし、石崎の話によると、忍び込もうものなら、怖いおじさんに追い出されるとか。
それに、若林とは、それほど親しくない。
「若林くん、あのやっぱり・・・」 言いかけた岬に、若林は赤くなった顔を見られないように、帽子のつばを下げた。翼のいない日を狙っていたのだとは言えない。普段、あまり話すことのない、気になるチームメイトとどうしても話したいと思っていたとは言えない。 「もう着いたぜ。入れよ」 強引に背を押され、門に押し込まれて、岬はとうとう観念した。今日は父さんは帰って来ないし、夕飯は昨日の残り物でまかなっても良い。
(つづく)
from past log<2009.8.5>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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