※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「お前の夢はそんなものだったのか?」 ピエールの台詞に、殴られるよりも強い衝撃を受けた。
PSGのJrチームの練習に参加させてもらうようになって、一ヶ月。あのJrユース大会の後、パリ・サンジェルマンに移籍したピエールは、その顔を生かして、僕に練習の場を与えてくれた。 「チームとしても、ミサキとコンタクトを取りたいみたいだったからな。こちらこそ面子が立ったよ」 ピエールはそう言いつつ、チームの練習が終わったら、必ずこちらに顔を出してくれる。Jrチームの皆からしたら、フランスJrユースのキャプテンを務め、PSGに移籍したピエールは憧れの的で、その彼に頼まれて嫌と言う人はいない。 「ミサキを頼むぞ」 なんて言われて、皆が僕に親切にしてくれる。もっとも、僕が正式にチームに入ってしまえば、状況は変わる。今のお客さん扱いではなかったライバル心を向けられることになるだろう。 「ミサキ、観念して契約しろよ」 ピエールは冗談めかして言うけれど、その青い目は、笑っていなかった。 「もし、僕が日本に帰ることになったって言ったら、どうする?」 フランスに来て三年。父さんは模写やアトリエにこもるよりも、スケッチに行くことの方が多くなった。そろそろ、ここで学ぶものはない、と思っていることは間違いなかった。だから、客観的な事実を述べたに過ぎなかったのだが。
ピエールは立ち上がると、僕の襟を掴んだ。サッカーボールを持っていない時のピエールは常に紳士的で、声を荒げたこともなかったので、僕は驚いて声も出なかった。その僕にピエールは言ったのだ。 「お前の夢はそんなものだったのか?」 その声からは怒り、よりも哀しみの方が伝わってきた。僕にとって、自分をライバルだ、と言ってくれる人に会ったのはピエールが初めてだった。 「実は、僕の夢は日本をワールドカップで優勝させることなんだ」 だから、そんな夢のような話を、打ち明けもした。一笑に付すかと思ったピエールは、僕の話を聞いて、にっこりと微笑んでくれた。 「素晴らしい夢だな」 だからこそ、PSGのJrチームの練習に参加できるよう取り計らってくれた。それがどれだけ嬉しかったか。 「・・・だって、どうしようもないじゃない。僕一人でフランスに残るなんて不可能だ」 それだけの経済力があるはずもない。それが現実なのだ。ピエールを睨み上げながら、僕は本当はうなだれていた。 それを察したのか、ピエールは今度は穏やかな口調で、僕に投げかけた。 「もう一度、お前の夢を話してくれ」 「日本をワールドカップで優勝させること、だ」 「誰が?」 「僕が」 「じゃあ、答えは自ずから出ているだろう?何故、お前はJrユース大会に参加できた?」 薄い唇の端を持ち上げて、ピエールは微笑んだ。それは自明の理だった。日本と比べ、フランスは国としてのサッカーのレベルが違う。草サッカーとはいえ、そこで鍛えられたからこそ、加入を認められた。 「俺の夢はわが母国フランスをワールドカップで優勝させることだ」 静かな声で告げたピエールに驚いた。そんなこと初めて聞いた。 「・・夢をかなえる一番の方法は、適切な手段を選ぶことだ。違うか?」 ゆるぎのない言葉は、僕の心の水面を揺らす。それは僕自身が感じていたことで、僕はその感情を押し殺してきた。 「今のうちにプロテストを受けろ。PSGはお前の価値を知っているんだ」 ・・・僕は、このままここに残れる?そうすれば?
一度投じられた石は、僕の心に波紋を刻み続けた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 昨日の続きじゃなくてすみません。 WJ読んだら、つい。勢いだけで書きました。 ピエール×ミサキではなく、ピエール&ミサキです。本編で岬くんのフランスリーグ挑戦は忘れられているようなので、ちょっとむかついて時代を遡ってしまいました。いつにもまして男前に書いたピエールさんですが、こんな状況ですので、皆様お許しくださいませ。
大体、オリンピック予選の後で岬くんにオファーなしってことはないですよ。 でも、どうやら予選後。おかしいやん。
拍手お礼: さくら様。いつもありがとうございます。 おっしゃる通りだと私は思います。PCの前でにへら笑う日向くんは嫌だな。 松山くん、反町くん辺りの笑い方ですよ、あれ。 そのコマだけ見たら、本当に誰か分からない。後はそちらで。
M☆様。いつもありがとうございます。 全然感想になっていませんでしたが、本当に予告編、としか。 岬くんについては納得いかなかった勢いは、今日の話にぶつけました。 みさPAはテンション上がりすぎました。楽しかった!
川澄ちょこ様。いつもありがとうございます。 みさPAは…あんなものしか出せなくて、こちらこそ恥ずかしいです。 岬くんの幸せな日々を描く!作品の多い中、アレが一つ浮いていますし・・・。 それだけに「石乃湯」へのコメント嬉しいです。 まったり更新、と思いながらも、毎日書きたいものがあるのは幸せだと思っています。 今日は勢いだけでしたけれど・・・暖かいお言葉に、いつも感謝しております。
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from past log<2009.5.8>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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