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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
柱の傷
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 若林くんの家に行くと、いつも圧倒される。敷地が広いだけではなく、建物や置かれている物にまで風格がある。
「古いだけだ」
若林くんは軽く言うが、とてもそうは思えない。磨かれた廊下や階段の手摺りの木目にまで、歴史だけでない秩序が感じられて、普通のおうちに思われない。まるで美術館のようだと、窓に張られたステンドグラスを見てため息をついた。
 ・・・僕、このまま一日廊下に座っていても良いや。薄暗い廊下の一部に、彩りのきれいな光が射し、ゆらゆらと揺れる。目の端で追いながら、若林くんの後に続いて、和室に入った。雪見障子の向こうには、岩や木々を配した庭が見える。
 それなのに。
 それだけでも高そうな柱には、傷が入っている。下の方は狭い間隔で、上の方にはほぼ傷の付いていないのとは対照的だ。
「これ・・・」
柱の傷を指で辿った僕に、若林くんがにこっと笑った。悪戯っぽい笑顔はちょっと驚いてしまう程子供っぽくて、一瞬僕は面食らってしまう。
「それ、な。背比べの跡。いつまで経っても兄貴達に追いつけずに悔しかったなあ」
「背比べ?」
歌は知っている。僕の誕生日頃にいつも聞く歌では、柱に傷をつけて背比べをする。でも、まさか本当にする人がいるとは思わなかった。しかも、こんな上等そうな柱で。
「したことないのか?」
「ある訳ないよ。僕ずっと借家だったもん」
借家暮らしは気を遣うもの。柱には画鋲の後すら残さないように。もっとも、いつも短期間だったから、そう傷つけたこともないのだけれど。
「そういうもんか?」
「そうだよ。何せ敷金がかかっているから」
賃貸住宅に掛かるお金は地方によって違う。場所によっては、違う名目で別途お金が必要になったりする。戻ってくる敷金は、重要なのだ。
「・・・苦労してんな、お前」
「そうでもないよ」
そうでなくても、一人っ子の僕は、背比べなんかしたことがない。毎年、成長していく自分、というのも自分の衣服でしか認識しようがなかった。
 そして、記憶の中の友達は変わらないまま、だった。だから、僕は小次郎や松山に再会した時、すごくびっくりしたのを覚えている。中学3年でドイツに会いに行った若林くんには、息が止まりそうになった。
「よし、岬、ここに立てよ」
不意に若林くんは僕の手を引っ張った。僕が慌てて立ち上がると、僕を柱の前に立たせる。
「じっとして・・・よし」
僕の頭を撫でると、若林くんは爪で柱に傷をつけた。それから優しい目で僕を見つめてくれる。
「毎年・・・は無理かも知れないし、五月でもないけど、お前がここに来た時に、いつでも刻んでやる。岬が俺と来た歳月を」
そう言って見下ろす若林くんからは、もうさっきの悪戯っぽさは影を潜めていて、僕は胸がどきどきするのを感じた。
「ありがとう」
・・・若林くんはこうやって、いつも僕に居場所をくれるんだね。小さい頃の君や君のお兄さん達と一緒に、柱で背比べをするとは思わなかった。
「じゃあ、今度は僕が印をつけてもいい?」
神妙な顔をして柱の前に立つ若林くんの頭のところに爪を立てようとして、背伸びをした。やっと傷がついたと息をついた瞬間、そのまま僕の身体が宙に浮く。
「・・・捕まえた」
「だ、駄目だよ、若林くん」
実家なのを気にする様子もなく、若林くんの腕は僕の腰を捕まえてしまった。僕の制止を聞き入れる様子もなく、柱を背に、僕を伸ばした膝の上に乗せるようにして、唇が近付いた。
「駄目だって・・」
この姿勢で暴れて、バランスを崩しでもしたら、と動きを止めた僕に、若林君はそのまま唇を重ねた。庭から見える廊下で、こんなことを、とは思いながらも、優しくもらったキスに、心は反応せずにはいられない。若林くんの家でこの柱を見る度に、きっと赤くなってしまうこれからを憂いながら、僕は若林くんの腕に身を委ねた。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
岬くんは絶対柱に傷をつけたことがないはずです。引越し歴8回の私が断言します。若林くんはある時期までは毎年つけていそう。そういう話が書きたかったのです。

外出前に更新の予定が、PCの調子が悪くて今更新です。
・・・蕎麦屋じゃないんだから。

拍手お礼:
ユリコ様。いつもありがとうございます。
2バージョン楽しんで頂けたようで嬉しいです。
引っ掻き傷こそ名誉の勲章ですね。

なめこおろし様。いつもありがとうございます。
たぬき寝入りver.と熟睡ver.の表現がとても分かり易いので、目次でも借用させて頂きました。
目を覆いたくなる・・・すごくよく分かる表現です。でも、指の間から見てしまうんです。
合宿所は男所帯で、集まるとうるさい感じくらいが楽しそうです。
その喧騒から少し離れただけでがつがつしてしまう若林くんって・・・
私も一緒に覗きたいと思います。

拍手のみの方もありがとうございました。励みになります。

from past log<2009.5.5>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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