※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 昨日の続き・・・というか。 誰かが部屋に入ってくる気配で目が覚めた。足音を忍ばせて、そっと扉を閉めるのは、きっと岬。
もう帰って来たのか、と思う。本屋をまわってから帰る、と言っていたわりに随分早いな、と思いながら、まだ目を開けずにいる。 近付いて来たところを、抱き締めたら、岬は何と言うだろう。目を丸くして驚くかな?顔を赤くして怒るかも知れない。 想像しただけで楽しくて、わくわくするのを押し殺して、じっとしていたら、驚いたことに岬は小さく呟いた。 「ごめんね」 はあ?様子を伺って、寝息を偽装するのも困難な俺に対し、岬はそっと隣に来た。それから、俺のシャツをめくる。
鼓動だけで、起きていると気付かれてしまいそうだ。できるだけ落ち着いて、息を吐く。平常心、平常心。ひょっとしたら、下手なPKよりも緊張しているかも知れない。何とか意識を流すように努めたのに、岬は俺の胸の上に乗り上げるようにして、胸に唇を当てた。
・・・あの、恥ずかしがりの岬が、キスを!? しかも、唇で強く吸って、キスマークを付けている?
さっさと抱き締めたいけれど、岬がどんな顔をしているのか見たいと思った。少しずつ顔をずらして、薄目を開けて様子を伺うと、岬は頬を赤く染めながらも真剣な表情でキスマークを付けていた。妙に真面目な顔をしているのがかえって色っぽくて、目が離せなくなる。 「ふう」 岬は息をつくと、身を起こした。少し汗ばんで張り付いている前髪や、まだ赤くなっている首筋が見えて、何ともたまらなくなる。 「岬」 「わっ」 急に身を起こした俺に、岬は不意をつかれたのか、飛びのこうとしたが、それは許さない。そのまま腕を掴んで、引き寄せた。 「襲いに来てくれたのか?」 「な、な・・・」 首を振って否定しても、桃色の唇が震えても、逃がしてやるつもりなどない。・・・こんな据え膳を食わないのは惚れた男として間違っている。 「そのお誘い、ありがたく頂くぜ」 唇を奪うと、ほんのり甘い味がした。いつもの岬の唇とは違う甘さだが、岬の恥らっている姿だけで、我慢していた感情がはじける。 「んん・・・」 こっそりベッドの上に来て、キスマークをつけるなんて大胆なことをやらかしたくせに、岬は恥ずかしそうに腕を立てる。確かに、一人部屋とはいえ、誰かに見られたら、言い逃れのできない状態で、俺は岬に口付けている。 「お前が悪いんだぜ、その気にさせるから」 二人分の体重に慣れないベッドがきしきしと音を立てる。言葉とは裏腹に、横抱きにしていた岬を丁重にベッドに寝かせると、岬は不思議そうな顔で俺を見上げた。 「何故って聞かないんだね?」 寝たふりをしていたのはばれていたらしい。まあ、我ながら見事なタイミングで腕を捕らえたのだ。並みの反射神経でないとはいえ、寝ていたと信じてはもらえまい。 「ああ」 聞く必要があるだろうか。人前でなくても、初めてのキスから何年経っても、変わらず初々しい俺の恋人が、俺にキスをしに来てくれる理由を。 「つまり、岬が俺を好きだってことだろう?」 「・・・君らしい言い方だね」 岬は何やら愉快そうにひとしきり笑うと、それからはにかんだように微笑んでみせた。 「でも、当たってる」 微かに呟くと、岬は目を閉じて、キスのお許しをくれた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 岬くんの可愛いkissにくらくらして、がつがつする若林くんを書くつもりだったのですが、あまりがつがつしていません。 今日の若林くんは、とりあえず好奇心が勝ってしまった感じです。二人とも好奇心強そうですもの。
拍手お礼: さくら様。いつもありがとうございます。 後悔する前に起こしてしまいました。でも、若林くんの幸せ度は上がったはずです! 早田くんにもコメント嬉しいです。 源岬界では早田くん書きの第一人者だと自負しております! 関西人だから。(って、志低過ぎますね)
ユリコ様。いつもありがとうございます。 熟睡している若林くんがかわゆいとコメントを頂いたにも関わらず・・・起こしてしまいました! 私もきっと可愛いと思います。 ですので、熟睡バージョンを↓に。
目が覚めたら、7時になっていた。 昨夜は岬と一緒だったし、眠るのも惜しい気がして、岬の寝顔を見ていた。フィールドに立てば、前を見据えて戦い続ける、強い背中も、抱き締めてしまえばこんなに華奢なのだと、切なくなった。優しい顔立ちは昔から変わらない。そして、知れば知る程想いは加速していった。 心の強さの分輝く双眸も、こうして安らいで眠る姿は穏やかだ。この細い身体の何処に、静かな寝顔の何処に、あんな強い魂が入っているんだろうと思いながら、心地良さそうに寝息を立てる岬の顔に見入った。 そして、気が付けば朝だった。もっとも、練習が終わってから、さっさと車に乗せて連れ出したので、無理をさせたのではないかとも思っていたし、そういう意味でも様子は見ておきたかったのだが。 「・・・今日は早目に帰ろうね。若林くん、目が赤いもの」 俺の目を見つめながら、心配そうにする岬に、結局は従った。一緒にいられないのは残念でならないが、岬に心配をかける方が心苦しい。それに、岬は本屋にも寄りたいと行っていたし、ゆっくり買い物もしたかったのだろう。
それにしても、帰って来たのなら、声くらい掛けてくれても良いのに。まあ、岬のことだから、俺を気遣ってくれたのかも知れない、と考えて食堂に向かった。休暇日とはいえ、自主練に明け暮れている面々も多く、軒並み合宿所に揃っているらしくて、食堂はいっぱいだった。 「今日のおかずは何だ?」 「お、若林、戻っていたのかよ。今日はミンチカ・・ッ」 石崎の動きが途中からスローモーションになった。持っていたトレイを落としかねない様子に、おい、と声をかけると、のろのろと机の方に歩いて行った。・・・変な奴め。 「浦辺、石崎の様子変じゃねえか?」 「何・・が・・・」 浦辺の様子もおかしい。ぽかんと口を開けて、俺を見ている。・・・何か、ついているのか? 俺は一通り顔を撫で回してみたが、何もついている様子はない。昼飯の時に付いたのなら、岬が教えてくれないはずもないし、枕の跡でも付いているのか?と考えて、浦辺の視線がおかしいのに気付いた。浦辺は俺の胸元を見ていた。 「ん?」 シャツがはだけている。確かに野郎ばかりの合宿とはいえ、むさ苦しかったか、と直しかけて気付いた。鎖骨の下の方、胸の上の方が赤くなっている。・・・どう見てもキスマークだ。 「お、何や、若林は彼女をうまく口説いたんやな」 早田がすすっと寄って来たかと思うと、そのキスマークをじろじろと見る。・・・やっぱり、どう見てもキスマークらしい。見覚えはないのだが。 「何の事だ?」 「あんな、最近流行ってんねん」 「うそっ、若林まで名誉の勲章かよっ」 「うおー、さすが若林さん!」 早田の声が大きかったせいか、反町や高杉まで寄って来て、俺のキスマークを吟味してくれる。おかげでシャツを直すことも出来ぬまま、俺は心当たりを見た。・・・昨夜じゃないことは分かっているんだが。 岬は、そ知らぬ顔で食後のお茶を飲んでいた。向かい側で談笑している三杉の首筋にはもっと派手派手しい御印がついていて、こっちが恥ずかしくなる。・・・あれに比べたら、確かに触れやすそうだ。 「何が流行っているんだ?」 視線の先では、岬が立ち上がって、こちらを一瞥すると、そのまま歩き出していた。 「知らねえのか?今流行ってる飴があってさ、それ舐めてからキスマーク付けたら、その相手とずっと・・・」 石崎の話を途中まで聞いて、大体の事情は合点がいった。どうやら、おまじないの一種らしいが・・・それなら、岬自身の口から聞きたいと思った。 「あ、悪い、部屋に携帯忘れてきた」 群がっている奴らをちぎっては投げ、というのは嘘だが、かき分けて、廊下に出た。廊下を走る内に、見慣れた後姿に行き会う。 「・・・岬」 「若林くん!?」 まさか追ってくるとは思わなかったのだろう、岬は戸惑ったように振り返った。その肩を抱くように、洗顔所に押し込んでしまう。 「お前の口から聞きたい」 「何を?」 黙ってキスマークを指した俺に、岬は足元に視線を落とした。恥ずかしそうに、逸らされた首筋は白くて、まるで誘っているようだ。 「言わないのなら、同じこと、してやる」 本当は、どんな顔をして、こんな悪戯をやってのけたのか、もう一度見てみたい。普通に口付けるだけでも恥ずかしがるくせに。 「・・・分かったよ、降参。おまじないだよ」 「どんな?」 「飴を食べてからキスマークを付けたら、その人とずっと幸せになれるっておまじない」 いかにも恥ずかしそうに呟く岬に、胸の中がじわじわと熱を帯びてくる。
俺と、ずっと幸せになりたいと、岬が望んでくれていた。
「絶対幸せになろうな、岬」 「あっ、もう、やめてっ!」
食堂に戻った俺の顔には引っ掻き傷が残っていたものの、俺は幸せだった。
(おわり)
ああ、ばかなものを・・・。すみません。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
from past log<2009.5.3>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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