※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 僕は臆病だ。
言わなければならないことははっきり言う。それを保留していても、決して良いようにはならない。ましてや僕はそこに長くいられる訳ではない。大事な場所も友達もプレゼントも持って行ける訳じゃない。この手に抱えられるのは、大事な思い出とぬくもりくらいだった。だから、思いは伝えたい。そして、優しい記憶を連れて行きたい。 「ありがとう」 言う度に、もらった優しさを改めて感じるこの言葉が好きだ。 「また明日」 そう言う度に、僕はもう一回会えることを信じることができる。心は繋がっていることを思う。
それなのに。
僕はどうしても好きだと言えない。
僕が好きだと言った途端に、魔法が解けたらどうしよう、なんて子供の頃には考えていたけれど、今はそんなことはないと分かっている。
でも、もし否定されたら。好きじゃないと言われたら。お前なんて要らないと言われたら…僕が持って行ける唯一の思いすら、儚く消えてしまう気がして。
「好きだぜ。岬」
それなのに、若林くんは簡単に言葉にしてしまえるんだ。僕が胸の中で押しつぶしている想いも、一番欲しい言葉も。
「・・・信じられない」
友達との別れの他には、何一つ恐いものなどなかった僕の中に、こっそりと芽吹いた臆病を見られるのが恐くて、僕は目を逸らそうとするけれど。
「逃げられると思うなよ。お前だって俺のことが好きなんだぜ」
強い口吻と瞳は僕を許してはくれない。君に会いに来ただけで、僕の勇気は途絶えてしまったというのに。
「信じろよ。俺の気持ちも、俺を選んだお前の気持ちも」
その臆病ごと抱き取られて、臆病な僕も往生際の悪い僕も、素直じゃない僕も、すっかり観念してしまったのだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 デフォな話を。 岬くんサイドで書いていても、すぐに若林くん目線で抱き締めたいと思ってしまいます。 今、若林くんサイドで書いたら、ガツガツしちゃいそうです。 自粛します。
以前、頂いた『MILK』に挿絵を付けました。 ・・・これぞ蛇足。
from past log<2009.4.29>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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