※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 
宵闇に、白い花が浮かぶ。岬と過ごす春は初めてだから、桜が残っていてくれて、嬉しいと思う。 「やっぱり桜は良いね」 桜の香りはそう際立ったものではない。それでも、近くに寄れば、嗅覚を和ませるような優しい香りが漂う。 「ああ。綺麗だな」 それ自体が淡い光を放つような桜の花びらが、ひらひらと舞った。 場所によっては花より酒、の客が多いのだろうが、穴場だけあって、他には人影もない。 「岬」 手を伸ばした俺に、岬はおとなしく手を重ねた。白い手をそのまま握る。岬と手を繋いで歩くことなど普段は望めないだけに、この幻想的な帳の下、繋いだ手の暖かさはまるで奇跡のようだと思った。 そう長くもない川の小道を、ゆっくりと歩いた。川の水面を桜が白く彩り、ゆらゆらと揺らぐ。霞むような淡い光の月明かりに照らされた道は静か過ぎて、まるで世界にたった二人しかいないような気分になった。 「岬」 「なに?」 砂をこする二人の足音しか聞こえない。 「・・・ずっとこうして歩いて行けたら良いな」 俺の言葉に、岬は足を止めた。桜を背に、夜目にも目立つ白い服で、すっと月を見上げる岬は、まるで桜の精のように見える。 「うん。何て素敵な夜なんだろう」 この夜にも、岬にも感動を覚える。
傷ついても春が来れば、背を伸ばし花を咲かせる岬の強さに、すべてを捨てて戦える潔さに、何度驚嘆しただろう。
前に、誰かが言ったのを聞いたことがある。桜に憧れる、と。自分は何も語らなくても、その花は人に感動を与え、愛される。
岬はまさに、桜のようだと思う。薄く色づく白い、可憐な花なのに、空に向かって花を溢れさせる樹は、見上げる程大きい。それ程の花を咲かせるために、どれ程の重みに耐えているのだろう。岬をこの腕に抱く度に、その重みごと抱いてやれたら、といつも望む。
「俺も、そう思う」 言った瞬間、風が吹き抜けた。やや冷たい川風はさわさわと音を立てて、木を揺すり、桜の花びらを舞い上げる。 「わっ」 闇を乱す花嵐に、岬が髪を押さえた。柔らかい花びらは、岬の髪にも降った。 「岬、ちょっとじっとして」 しなやかな髪に絡みついた花びらを取ってやる。 「ここにも」 岬の頬についた花びらを取る振りをして、優しい花びらのような唇を盗んだ。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 どこへ行っても桜の綺麗なわが町では、町中花見状態です。それでもう一度桜を書いてしまいました。いつもより少し頑張ったつもりなのですが、そう変わらないかも・・・。
拍手お礼: いつも様。いつもありがとうございます。 萌えどころかはともかく、量だけはたくさんありますので、ためると大変な通信教育状態の拙宅。 ご要望も嬉しいです。こっそり挑戦するつもりです。
さくら様。お帰りなさいませ?v 拍手文、続き物ですみません。ちゃんと続きます。 石崎くんに反応ありがとうございます。他のキャラにものっとられたことはないのですが、4月1日は円谷サイトにカネゴンブログも立つ日ですから、やっぱりやりたくて。 ご洞察通り、うちの二人は「自分の方が好き」だと思い込んでいます。それを口にしちゃうとバカップルになっちゃうんですよ。自制は必要です。 桜のお話楽しみにしております。後はそちらで。
拍手のみの方もありがとうございます。励まされました。
from past log<2009.4.7>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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