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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
殿様ゲーム
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「じゃあ、22番。ジュースおごってくれ」
「何だ、若林、狙い撃ちだな」
合宿所では何故か王様ゲームが流行っていた。もちろん持ち込んだのは反町である。好奇心旺盛な年頃のメンバーはすぐに飛び付いたものの、男ばかりの合宿のこと、ダッシュや腕立て伏せを強要する罪のない遊びになっていた。
 ところが、今日は更に凶悪なことに、クジではなく、背番号による王様ゲームになっていた。背番号制が悪かったのか、若林はずっと指名状態で、王様ゲームはある意味、殿様ゲームとなっている。
「ああ、良いぜ。お安いご用だ」

「じゃあ、12番」
日向が唇の端を持ち上げて笑う。
「お前の好きな奴を教えろよ」
この手の話は相手を見れば有効打になることを、寮生活で鍛えられた日向はよく知っていた。その上での鬱憤晴らしであり、間違っても11番や14番に話を振ったりはしない。
「え、いや・・・その・・・」
指名された12番こと、松山は予想を裏切らず、しどろもどろになるは、赤面するは、と忙しい。
「ペナルティーは大事なものを差し出す、だよ。松山くん、観念して言いたまえ」
普段取り立てて日向と仲の良い訳ではない三杉が結託しているらしいことに、周囲は嫌な顔をする。
「・・・仕方ねえ」
松山は、赤い顔のまま立ち上がると、隣に座っていた岬の手を掴む。
「俺の大事な宝物だ。大事にしてくれよ」
ハチマキの没収を企んでいた日向と三杉は顔を見合わせた。そりゃ、松山が岬を本当に大事にしているのは分かるけれど。そして、困ったことに松山は悪あがきではなく、本心から言っているのだ。
「ちょっと・・松山・・・」
日向の方に引っ張って来られた岬も当惑している。大事な宝物、と言ってくれるのは嬉しいけれど。
「ちょっと待て!岬は俺の宝物だ!」
更に事態を紛糾させる若林の言葉に、岬は頭を抱えた。人目を忍ぶ恋仲という自覚はないのだろうか。
「そうだよ、松山くん、勝手なことをしたら困るよ。岬くんは俺のだよ」
翼が主張すれば、日向が黙っている訳がない。
「翼、俺が貰ったんだから、俺のだ」
「日向さん・・・あんたって人は・・・」
憎らしげに鼻で笑う日向に、翼への対抗意識はそこまで・・・と若島津は真剣に悩んだ。あんた、それじゃ悪役ポジションですってば。
「とにかく、そんなことは許さん!」
ただでさえ、それまでの殿様ゲームで苛立っていた若林である。岬の手首を握ると、自分の方に引き寄せてしまう。
「うるさいっ!ルール上では間違っていない!」
「いや、反則だっ!」
頭上で喧々囂々やられて、岬はすっと立ち上がると、息を吸い込んだ。
「小次郎、何ばかなこと言ってんのさ。ばかみたい」
「バカバカ言うんじゃねえ!」
「・・・じゃあ、何?単なるゲームなのに、随分人が減っちゃったんだけど」
岬の言葉に、慌てて周囲を見回せば、なるほど、人数が激減している。
「他の奴らは?」
「呆れて帰ったんに決まってるやろ」
渦中のメンバー以外は反町、早田、次藤…。海千山千の物見高い連中である。それはそのまま、この集いの不毛さを物語っていた。
「とりあえず、おひらきね。小次郎はあんまりバカなことは言わない。松山は純情なのは良いけど、腹決めないと藤沢さんに逃げられるよ」
先に日向を叱る辺り、さすがは岬だと皆が感心し、日向はもちろん憤った。ことがここまで紛糾したのは自分だけのせいではあるまい。
「まあまあ、キャプテン落ち着いて」
三杉に従って、撤収を始めていた若島津は同時に日向をなだめるという、面倒な状況も慣れたものだ。

「あれ、岬は?」
片付けも完了し、部屋に引き上げる松山が周囲を見渡した。宝物、というのはまんざら嘘でもない、というのが衆目の一致するところだ。
「ゴミ、捨てに行ったぜ」
まだ渋面の日向に、笑顔の若島津が続く。
「松山、いい加減にしないと、結婚式の時に電報を送りつけてやるぜ」
「いらねえ」
日向以上の渋面で松山は二人をにらみつけた。

 ゴミを捨てに行った岬は、付いてきた若林を振り返った。
「ゴミ袋、よこせよ」
当然のように手を出した若林に、岬は首を振る。
「一人でも、持てるよ」
「さっき、騒いだからな。お詫び」
確かに、さっきの言葉はなかった。素直に非を認めるのは、数多い若林の美点の一つだと、岬は若林にゴミ袋を渡した。
「じゃあ、お願いするよ」
手渡されたゴミ袋で手が塞がった若林に、今度は岬が付いていく。
「お前のことになると俺はみっともないな」
「うん・・、もうあんなのはやめてね」
宝物、と言われたのはもちろん嬉しかったけれど。叱る、というよりはたしなめる口調の岬に、本当は怒っていないことを感じて若林は微笑む。
「今は手が塞がってるけど、その後でキス、させて」
雰囲気を出して、囁く若林を岬は睨んだ。
「ゴミ袋、持ったままのくせに」
「じゃあ、これ捨てたら、覚悟しろよ」
そう言ってすごんでみせる若林を、岬は静かに見上げた。一旦外に出た為、漆黒の夜空には星が輝いている。それに包まれるように、二人だけでいる時間は、それこそ宝物のようだった。若林の手にしているのがゴミ袋だったとしても。
「後でね」
星空を背に微笑む岬に幸せを感じ、若林は嬉しそうに笑った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
ゲームシリーズ、今回で終わり。楽しかった?。
ネタがあると、こんなにも速く書けるのか、と思うくらい速かった。
普段のネタのなさを思い知ります。

拍手・コメントお礼:
本田様。いつもありがとうございます。
こちらこそもったいないお言葉を!萌えさせて頂いているのはコチラですのに。
もう大好きです。
市庁舎前はイメージを壊してしまってすみませんっ。
そうなんです、人通りのある中の何気ないそぶりのキスが、と思い、
通りすがりの人を描きたくて、石崎くんを描いたらあんなことに!
源岬以上に人気です。・・・あれ?
こちらこそ新作を楽しみにしております。

M☆様。いつもありがとうございます。
早速回答いただき、嬉しかったです。そして、なるほど、と思いました。
是非採用させて頂きたいと思います。
お礼に、もしよろしければ、何かリクエストして下さい。
達成できるかはともかく、できるだけ応えたいと思います。

拍手のみの方もありがとうございました。励みになりました。
土曜企画も引き続き募集中です。

from past log<2009.3.28>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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