※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
今日はプチパラレルで、二人は高校の同級生設定です。 受験生を除けば、2月になれば、バレンタインを意識する学生は大勢を占める。 それはこの高校でも例外ではなかった。かつては南葛高校きっての硬派として知られた主将の若林が、チームメイトのきれいな横顔をじっと眺めているのも、勿論その為である。 「岬・・・」 練習が終わって、帰り支度を済ませ、鞄から出したチョコレートを食べていた岬は、視線を感じて振り返った。 「若林くん、どうしたの?」 頭上に、見えない天使の輪すら輝くようで、若林はいつものように見惚れてしまう。 「それ、どうしたんだ?」 土曜の練習とはいえ、岬が菓子を口にしているのは珍しい。 「昨日、商店街でおまけにもらったんだよ。食べる?」 岬の問いに、若林に異義があろうはずもない。頷く若林に、岬は微笑むと、若林の手の平の上に、小さな粒を二つ落とした。 「じゃあ、おすそ分け」 駄菓子の類いはあまり口にしない若林であるが、たとえ一個10円に満たない代物であっても、岬から手渡されるのなら別である。ましてや、特別な日、なのに。 「良いのか?」 「うん。どうぞ」 「どうせなら、口に入れてくれるともっと幸せなんだけどな」 若林の冗談めかした言葉に、岬が困った口調でいなす。 「もう、何を言ってるのさ」 「だって、今日が何の日か知ってるだろ?」 「今日って、14日の土曜日・・あ」 ミニ黒板に目を走らせた岬はそのまま絶句したきり、みるみる赤くなっていく。その世にも可愛らしい様を見ながら、若林はチョコレートの袋をちぎった。 「じゃあ、愛のチョコ、頂くぜ」 「え、そんな意味じゃないよっ」 4月に岬が転校して以来、ずっと好きだった。それでも、いくら好きだと告げても取り合いもしてくれない、つれない相手に時々寂しくなってしまう。それなのに、ふとした拍子に、岬が自分のことを意識しているような気がして、諦められない。 「今すぐにでもお返ししたい気持ちなんだけどな」 落ち着かない表情の岬に、若林は対照的に微笑みを浮かべている。それはまるで普段と正反対だ。 「要らないよ。そんなつもりはないんだから」 いかにも、な粗品でお返しを貰う話など聞いた事がない。第一、好きだと日常的に言われ、慣れ始めてはいるものの、女の子扱いは真っ平だと岬は思っている。 「じゃあ、友チョコ。それで良いだろ?お返しは期待してくれ」 まさか、今年流行の単語が若林の口から出るとは思わず、岬は圧倒されて頷いてしまった。
それが1ヶ月前。二人の関係には変化はないのに。今日の練習の後に、少し時間が欲しいと言われた岬は、やっぱり落ち着かない。ホワイトデーの今日、きっとお返しをくれるつもりなのだろうと思うと、途端に心臓の鼓動が気になりだして、じっとしていられない。 バレンタインデーからホワイトデーまで、ちょうど一ヶ月。この一ヶ月、というのは絶妙の間だ。女の子はよく一ヶ月も耐えるものだと岬は思う。恋をしていないはずの自分でも、どきどきして耐えられないくらいなのに、と。 それなのに、今日、声をかけられるのが待ち遠しくて、仕方がない。まだ十分走っていないのに高鳴る胸に困惑しながら、岬はアップを続けた。
一方、岬と一緒に帰る約束を取り付けた若林も、今日はすっかり冷静さを欠いていた。見上監督に森崎以上のざる、などと控えGKにも失礼な一言を浴びせられても、駄目だった。 今朝、顔を合わせてから、岬の喜ぶ顔が見たくて仕方がない。 「今日、ちょっと時間もらえるか?良かったら一緒に帰ろうぜ」 誘った時に、自分を見上げる岬の顔に一瞬血の気が差して、まるで薔薇色だと若林は思った。それを見てしまった為に、練習も手に付かない。あの岬からすぐに色好い返事が貰えるとは思えない。すでに一年が経とうとしているのに、まだ距離は少し残っていて、一足飛びに越えられるとは思ってもみない。 それなのに。殊更に自分を意識している岬は、チョコレートよりも甘くて刺激的で。喜ぶ顔を想像しただけで、心臓が止まりそうになる。300倍返しくらいではきかないホワイトデーのお返しでも、この思いは伝え切れない。 それでも、思いのたけを凝縮したプレゼントを渡せるホワイトデーは悪くないな、と柄にもなく軽薄なことを思う若林であった。
そして、そんな二人のチームメイト達は、3月14日にだけは試合を入れないように誓い合ったのだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 ホワイトデーネタ書くつもりはなかったのですが、ホワイトデーって良いな、と個人的に感動して、衝動的に書きました。ただ、惜しむらくはそういう機微が全然表現できておりません。 以前からプチパラレルで、同級生設定やりたいと思っていたので、今回それを果たしました。これはシリーズ化しようと思っています。(気が向けば久しぶりの連載も)
拍手お礼: さくら様。いつもありがとうございます。 ホワイトデー、やりすぎました(笑) バレンタインのお返し、をしたいけれど、できない岬くんを書こうと思ったらあんなことに。今日は正統派(?)にしてみました。後はそちらにて。
いつも?の方。続けてのコメントありがとうございます。 シチュー!びっくりです!偶然ってすごい。 岬くんのシチューはおいしいと思います。最初はブラウンシチューだったので、デミグラスソースを作り置き設定だったのですが、ホワイトにしました。どっちも絶品だと思います。私も是非教わりたいです。
拍手のみの方もありがとうございました。いつも励まして頂いております。
from past log<2009.3.14>
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|