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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
初恋
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
毎度、季節感のない拙宅です。今日は小学生編です。

「おかしいよな、SCの合宿で、肝試しなんて」
「少年補導のキャンプかって」
口ではぶつぶつ言いながらも、石崎と浦辺は懐中電灯を手に出発した。
 急拵えの南葛SC、強化と親睦を兼ねた合宿で、スケジュールに当然のように入っていた「肝試し」。
 顔を真っ青にして嫌がる森崎以外は、一応全員参加、ということになった。

 そして、批評や批判をしつつも、やっぱり小学生。城山監督達の用意した装置にきゃあきゃあと楽しんでいる声が待機している場所まで響いてくる。

「岬、行くぞ」
若林の声に、滝達と話していた岬が顔を上げる。・・・参ったな、と岬は思った。ほとんどのチームメイトと仲良くなった岬であるが、若林とは常に一定の距離を置いていた。
 嫌い、という訳ではない。若林は岬が会った中でも最高のゴールキーパーだったし、その才能には感嘆している。二人の天才とサッカー出来る喜び、を毎日噛み締めていたりもする。
 若林にしても、岬の能力は認めているのだろう、無視されている訳でも、邪険にされている訳でもない。
 ただ、お互いに近寄りもしなければ、会話をしたこともなかった。肝試しのパートナーにくじで当たったのはその若林。岬と二人と分かった時、若林が黙って帽子を深く被り直すのを、岬も内心複雑に思いながら、見た。
「うん」
岬はさっと立ち上がると、若林の隣を歩いた。肝試し、というのは初めてだった。とはいえ、危害を加えないものが怖いとは思わない。むしろ少年らしく、好奇心たっぷりで仕掛けを見破ってやろうとさえ思っていた。
「岬」
隣を歩く若林は、前を見据えてずんずん歩く。岬も負けじと早く歩く。監督の苦心の火の玉も無視した辺りで、岬はびっくりして声をあげた。
「わっ」
急に、手を握られた。驚いて若林を見上げても、薄暗いのと帽子のせいで、顔もほとんど分からない。
「怖いなら黙ってついて来い」
そう言って、手を引っ張る若林を、岬は呆れ顔で見返す。怖い訳などない。いきなり手を握るからびっくりしただけだった。黙っていたのは、特に話すこともないせい。それを、怖いと解釈し、からかうでもなく手を繋いでくる若林は、本当は優しい人間に違いなかった。
「あ、ありがとう」
繋いだ手から暖かさが伝わってくるようだった。取っ付きにくいというよりは不器用なのかな?と、岬はまっすぐ歩く若林を見上げた。

 繋いだ手が熱い。顔から火が出そうに熱い。隣を歩く可愛い奴の手をやっとの思いで握りしめた。本当は、自分のことが怖いのかと思っていた。いつもむっとしている自分のことが嫌いなのかと。だから、一大決心して手を握った時に、まさか礼を言われるとは思っていなかった。こちらを見上げる顔はどうにも可愛くて・・・全身から火が吹き出すかと思った。繋いだ手が小さくて柔らかいことを意識すれば余計だった。
 照れや緊張が伝わってしまわなければ良いと思う。足は自然に早くなるのに、いつまでもコースが終わらなければ良いと願った。

「あれ?もう着いたみたい」
肝試しも何も、怖いことなどなかった。二人して何一つ仕掛けに気付かぬまま、前にはゴールの旗が見える。
「お帰りなさい。二人とも静か過ぎだよ」
「そうだぜ、もっと反応しろよ」
出迎える声に、二人はどちらからともなく手を離した。やはり怖がっていたのだと思われるのがイヤだった。そして、この不思議な時間をからかわれるのがイヤだった。
 そうでなくとも。
「若林さん顔赤いですよ」
「もしかして、1キロ走って来ちゃったんですか?」
からかいのネタになるのは避けられない。苦笑した若林に、翼の声も届いた。
「岬くん、顔赤いよ。どうしたの?」
手の中に相手の手の感触が残る。
「ううん、何でもない」
赤い顔を隠すように、顔の前で手を振って、岬は否定してみせた。可愛い仕種に、周囲が和む中、岬はその一人の視線を感じた。手と同じように、熱い激しい視線。

 まだ恋も知らない二人だった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
意識し始める二人を、と思ったのですが、妙に意識している時点で芽は出てしまっています。
それにしても、常に季節感ゼロの拙宅です。

たぶん、この状態が 借りだと思うなら今すぐ返せにつながるのではないかと。

拍手お礼:
さくら様。いつもありがとうございます。
異世界に行くことなく(「回転宮・緑)、また山賊になることもなく
(「衝撃!東邦の校舎裏には山がある」)、二人は生還しました。
岬くん「聞かないでオーラ」は出ていると思いますよ。
でも、元々そういうのを聞かれにくいタイプだと思います。何となく。
後はまた。

素敵?のコメントを下さった方。ありがとうございます。
何だか恐縮です。でもお誉め頂いて、本当に嬉しいです。
質より量の拙宅ですので。よろしければ、またいらして下さい。

拍手のみの方もありがとうございます。いつも励ましていただいております。

from past log<2009.2.18>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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