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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
岬親子の謎
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

くだらない話を思いついたので書いてみました。
似てない親子ですが、実は似ていた、なら面白いなと。
登場人物は私の趣味です。


「僕、父さん似だったら良かったのに」
夕食後の一時、全日本ジュニアユースの食堂で、岬の漏らした一言は、くつろいで茶を飲んでいた面々を凍らせるのに十分だった。
「父さんって、あの?」
松山は岬の男にしては可愛過ぎる顔を見直した。
 雪国で育った松山の目から見ても色白で、サッカー選手とは思えない程華奢でしなやかな肢体、夢見るような大きな瞳に、整った顔。いわゆる美少年である。何より、浮かべる笑顔は優しくて、周囲を魅了してしまうほど。こうして見ているだけでもうっとりしてくる。それが。
「うん。他に誰がいるのさ」
岬の父を知る、松山に日向に若島津、井沢は思考停止に陥った。
「なにみんなして固まっとんねん。岬のおとんってそんなに似てへんのか」
関西人の早田はその異様な反応に容赦ないツッコミを浴びせる。反町も頷くが、目を剥いた猛虎がほえる。
「岬の親父さんは岬には全然似ていないぞ」
若島津は腕組みしながら深く頷く。
「岬は完全にお母さん似だよな。お母さん見たことないけど」
見たことないくせに断言できるてどんなんや、と早田が突っ込む前に、井沢がごく冷静に言った。
「むしろ、うちの高杉に似てるよな」
樽のような腹に、しまりのない全身、肉にうもれて目鼻立ちの不明瞭な顔に、無精ひげ。いわゆるむさい中年そのものである。
「言われてみれば!」
「ぎゃははは」
「井沢、ナイスセンタリング!」
笑い転げている元チームメイト達をよそに、反町は動揺を隠せない。岬と高杉、どちらの外見が良いか聞けば、ほぼ全員が岬というだろう。それくらいの大差、圧倒的な優位。それなのに。
「そりゃ特殊だろ」
早田に至っては、いつのまにか岬の手を握りしめている。
「そんな勿体ないこと言いなや。こんなにべっぴんさんやのに」
いくらなんでも高杉に対して失礼であろう言葉である。高杉だって一生懸命生きている。だが、二人の言葉にみんな心から同意している。言うなれば、アイドルがカールおじさんに憧れるようなものだ。
「大体、何で親父さんみたいになりたいと思ったんだ?」
ひとしきり笑った後、気を取り直した若島津。対して、非常に失礼な連中に腹を立てながらの岬の言にいわく。
「だって、父さんの体格なら当たり負けしないし、日頃の練習でも気を遣われることないでしょ」
岬太郎は性格も父親に似ていない、と昔馴染み達は改めて思った。
 確かにテクニックでは負けない岬だが、今の体格ではなかなか辛いものがある。加えて、練習中の気遣いときたら。本人が可愛いからだけではない。黄金コンビのパートナーの翼だけでなく、猛虎日向小次郎、北の荒鷲こと松山光、日本の守護神といわれる若林とチームの中核の選手を揃って保護者にしてしまう、それが岬である。その上、花のような外見をほこりながら、その躊躇や隙を見逃さない、強気で冷静で狡猾なテクニシャンの岬のこと、手を抜かれたら練習にはならない。ストイックで自分に厳しく、向上心の強い男。
 その辺りが、放浪親父とは違うよな、と思われるゆえんである。
「でも、スピードが落ちたら、困るんじゃないか」
確かに、当たり負けはしないだろうが、と言下に含んだ反町の的確な質問に、若島津がそうだよな、と尻馬に乗る。転がした方が早いような親父だし。
 岬は、非常に優美なしぐさでお茶を飲み干し、立ち上がった。ポットを手に取る。
「父さん、僕より足速いんだけど」
岬は二人にお茶をいれ直してから、あっさりと言う。ええっ!?周囲の驚きぶりといったらない。
「確かに、覚えてるぜ。近くの銭湯で火事があった時、一番に消火活動してたもんな」
聞いた者の頭の中を、カールおじさんが音速で駆け抜けた。
「本当に、父さんに似たら良かったんだけど」
岬はもう一度繰り返した。キラキラの笑顔で…。

from past log<2008.9.21>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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