※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 旧拍手文。 勇者ツバサは、夜道で一人歩いていた。普段なら無視するモンスターさえ何匹も手にかけ、汚れた剣を鞘に収めることもなく歩いているさまは、名高い勇者のものとも思えない。世界を救う勇者として、幼い頃から注目を浴び続けていた彼には似合わぬ陰鬱な雰囲気の原因は彼の残してきた、仲間達。
「もう、二人ともいい加減にしてよっ。そんなにいちゃいちゃされたら、眠れないじゃないか」 野宿で、夜になっても二人で手を握り合ったり、見つめ合ったりしている二人に、とうとうツバサは爆発した。 「ミサキ、お前の手は白くてきれいだな」 「そんなことないよ。ワカバヤシくんみたいに強い腕の方がうらやましい」 「これ以上強くなってほしくないけどな。お前のことは俺が守りたい」 「ワカバヤシくん・・・」 などという会話を、自分のいない隙を狙って、えんえんと繰り返されたら、さしものツバサとていやになるというものだ。 出会った時の二人は、それぞれ限りなく勇猛ながら知略に富んだ戦士と、若いながらも操る魔法の数が多く聡明な賢者だった。この頼りになる仲間をつかまえた自分は幸運な勇者だと思っていたのに。 「じゃあ、俺たちは町の宿屋に行くから、お前はここで寝てろよ」 ワカバヤシの暴言に、ミサキがとりなす。 「ダメだよ、ワカバヤシくん。ツバサくんは世界を救う勇者なんだから。ツバサくんが宿屋に泊まって」 「そうだな。俺たちがここで泊まろうな」 うきうきと声の弾むワカバヤシとは対照的に、ミサキの気遣いがこれほど嬉しくなかったことはなかった。 「でも、宿屋に泊まるにしろ、お金が」 昨日装備を買い換えたところで、懐具合は心もとない。しかし、ワカバヤシは平然と自分の財布から金を取り出した。 「いくらでも持って行け」 ワカバヤシはナンカツ村の領主の息子である。金に不自由したことはないし、いつでも金を持ってこさせることのできる身分だった。そして、ミサキのためならいくら金を遣っても惜しくはないらしい。今夜は、邪魔なツバサを追い払って、ミサキとおおっぴらにいちゃつくつもりなのは明白だった。 「分かった。じゃあ、朝に迎えに来るよ」 ツバサが言い終わらない内に、簡易テントに姿を消したワカバヤシとミサキ。・・・せめて、見送れよ。
町に向かいながら、ツバサは決意していた。今度こそこの二人と縁を切る。
頑張れ、ツバサ。世界を救うのは君だ。
(つづく)
このシリーズ、5話で完結予定です。それにしても、このいちゃいちゃっぷりは書いていて本当に楽しいです。
次 (4)
from past log<2009.2.6>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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