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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
リクエスト
※二次創作です。苦手な方はご注意下さい。女性向け表現を含まないこともないです。

15000Hitありがとうございます。これからもよろしくおねがいします。
今日はGOLDEN-23 シドニーのオーストラリア戦の後の話。
リクはなかったので、15000Hit記念、です。

 岬太郎は、若林の入院した都内の病院を訪れていた。ナースセンターで尋ねて、若林の病室に赴く。
「・・・若林くん」
「どうぞ」
ノックをして入った病室は個室で、しかもかなりゆったりしている。しかしそこで横たわっている若林は左目に大きな包帯を付け、見るからに痛々しい。オーストラリア戦で負傷退場した状況を思い出して、岬は少し胸の痛みを感じながら、中に入った。
「お見舞いに来たよ。今日移動だから明日がお休みなんだ」
努めて明るい声で、岬は若林の横に座った。声で相手を察してゆっくりと半身を起こした若林が、よお、と手を上げる。
「良い部屋だね」
「ああ、三杉が紹介してくれたんだぜ」
だから、東京の病院だったのか、と岬は納得した。それでも、三杉のこと、最高水準の技術を誇る病院を紹介したに違いない。その上、同じように入院歴を持つ岬は、周囲を見渡し、自分の時よりも更に数段上の病室だと判断した。このホテル並の外観の中でも、トップレベルの病室に違いない。
「リンゴ、食べる?」
優しく微笑む岬の顔に翳りを見て、若林はリンゴに伸ばされた岬の手をとった。
「無理して笑うなよ」
「君こそ」
鋭く切り返されて、若林は岬を見つめる。毅然とした口調に反して、岬がこれほど悲しそうに微笑んでいるのを、若林は見たことがなかった。そのまま、涙をぽろぽろ落とす岬に、切なくて仕方がなくなる。
「俺は大丈夫だよ」
若林の言葉に、岬は激しく首を振る。その度に、頬を涙がつたっていくのが、何ときれいなのかと若林は思わず見とれた。
「僕の前では強がらないでよ」
抱き付く、というよりはしがみついた岬に、若林は口元に笑みが浮かぶのを禁じえなかった。さっきまで、厄年だの何だのが頭に浮かんでいたのに、一気にもやが晴れたように、暗い気持ちはなくなっている。それよりは、岬の涙をぬぐってやりたい。

「ごめんね、辛いのは君の方なのに」
抱き寄せられたまま、岬は若林の膝の上で所在なさそうに下を向いた。涙はひいたものの、まだ顔が赤い岬に、若林は微笑む。
「大丈夫。少し元気になった」
こうやって会いに来てくれるのは大変だったろう。明日は休みとはいえ、ゆっくりはできないだろうに。心の中が暖かくなって、じっとしていられないような喜びが満ちる。
「本当?」
「それで、もう少し励ましてくれると嬉しいんだが」
耳元で囁かれた言葉に、岬はすでにほのかに赤かった顔を真っ赤に染め上げた。それでも、包帯を巻いたまま真剣に見つめる若林を見つめる。若林があんなに小さく見えたのは初めてだった。
「本当に、それで元気になるなら」
怪我がその部位だけではなく、精神をも傷つけることを岬ほど知る人間はいない。一時でも若林が喜んでくれるなら、そうしてあげたいと思った。

 鍵を掛けた病室に、更につっかえ棒まで設置した。声まで押し殺しながら、自分の上で肩を腰を揺らす岬を、愛しくてたまらないと若林は思った。上に乗ってしてほしい、という若林のリクエストに、恥ずかしさを堪えて全身全霊で応える岬に、片目の包帯が邪魔で仕方がなくなった。自分の首にまわされた白い腕が、さらさらの髪が揺れる度に、身体の熱が上がっていく。
 騎乗位で抱き合ったことがない訳ではない。いつもは若林が一方的に抱き上げるばかりで、合意の上では初めてである。岬の表情も、自由度が高いだけにいっそうなまめかしい姿態も、興奮を高めるものの、若林に負担をかけまいと、いつもより若干積極的な岬の想いには追いつかない。どれだけ抱き締めても胸の中の暖かさを出し切れはしない、と若林は岬を抱く腕に力を込めた。

「若林くん、目は大丈夫?」
「ああ。お前がこんなに愛してくれているのに、これくらいで弱音吐いた自分が情けない」
患者のベッドに引きずり込まれ、疲労困憊の身体を横たえた岬に逆に気遣われ、若林は微笑む。困ったことに、本当に元気になってしまった。こんなに優しく慰められる日が来ると思ったことなどない。陳腐な癒し、など嫌悪の対象でしかないのに、岬の思いが嬉しくて、幸福感が胸にこみ上げてくる。
「僕になら、何でも言って。どんなに情けなくても、君が楽になるなら」
情けないのを見られるなんてまっぴらなのに、不覚にも感動した。
「お前だけだ」
こんなに好きになったのも、こんなに勇気をくれるのも。若林の言葉に、岬は優しい笑顔で応えた。
「僕も、若林くんだけだよ」
こうして元気になってくれる恋人にも、それ以上に元気になった自分にも呆れながら、岬は若林の痛みが和らぐことを心から祈った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
15000Hit、踏まれた方は不明です。
気になりますが、一応記念にいつもと少し毛色の違うものを。
若林くんの好きな体位は騎乗位ではないか、という意見を
複数のサイトさまで拝見し、それなら、と勝手に採用。書いてみました。
この状況なら、岬くんだってOKしちゃうかな、と。

昨日の「困った人」を書いた後、原作を確認すると、岬くんはクロスタイだったので、
解く、ではないことが分かりました。修正しました。失礼しました。

from past log<2009.1.31>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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