※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 お互いのネクタイを確認してから、車を降りた。 「大丈夫か?」 「うん、平気」 そう答えたのに、車を降りた若林くんはさっさと僕の手を取る。 「お前の大丈夫、なんて信用できるかよ」 新郎新婦よりも前に、手に手をとって登場、などとからかわれた割に、周囲の目は暖かかった。さりげなく気を遣う、ではないが、今の僕の状態では誰も気にしない。 「岬、大丈夫か?」 駆け寄った松山に、頷く。 「うん。若林くんが車出してくれて」 「そうなん?ええなあ」 早くから自立しているだけあって、数少ない免許所有者である若林くんは、医学研究所まで迎えに来てくれた。 「そうじゃなきゃ、妹が心配して、ついて来るとこだったんだよ」 もっともそれは僕の前科に由来する。無理を押してのリハビリに始まり、家を抜け出すに至っては、父違いの兄を穏やかだと信じ切っていたらしい妹を泣かせるに至った。 「連れて来たらええやん。岬の妹やったらべっぴんさんやろ?」 「随分歳は離れてるけどね」 早田くんの言いように、やっぱり連れて来なくて良かったと思った。 「来ねえ訳には行かないからな」 タキシード姿の猛虎を見るとは思わなかった。つい袖を見た僕は、袖を睨んでいる若島津と目が合った。さすがに文句なしに似合っている。隣にいる三杉くんと双璧なのに。その彼がやっぱり小次郎の袖を気にしているのを見ると、笑ってしまう。 「笑うなよ、岬。俺だって恥ずかしいんだから」 若島津の苦難の甲斐あって、今のところ袖は無事である。そこかしこの再会は盛り上がって、黒いスーツの群れは可愛く見える。
それでも、式が始まると、厳粛な雰囲気になった。誰も歌わない賛美歌を、音楽が得意という小次郎が歌っているのも、松山が歌おうとしているのも、笑えるはずなのに、感動的だった。 翼くんの抱えて来た思いも、中沢さんの想いも僕はよく知っている。その二人の旅立ちをこうやって見送ることの出来る今日の幸せに感謝する。
「翼くん、おめでとう」 花束と一緒に渡したものに、翼くんと中沢さんが顔を見合わせて笑う。 「当然、参列してもらわないとね」 パスしたサッカーボールを受け取ると、翼くんが笑う。 「早苗ちゃん宛てばっかりじゃないか」 式場で寄せ書きをした。 「あねご、幸せになれよ」 なんかはマシな方で、 「あねご、翼を頼んだ」 なんてのもある。 「絶対幸せにするよ」
サッカーボールに誓った翼くんを突き廻した後、タキシードのまま、ボールを囲み始めた面々に、笑いながら椅子に座る。歩けない訳ではないが、やはり無理は辛い。 「若林くんも行ってくれば良いのに」 「腕故障中だから」 苦笑した。決勝戦の後はお互いに血まみれで、しばらくは傷が開かないよう怖々抱き合った。 「こうして見ているのも楽しいしな」 「うん」 誰よりも翼くんのファンである中沢さんやゆかりちゃんもタキシード達の試合を夢中で見ている。まして、僕達が釘付けになるのは当然だった。 「良い景色だな」 若林くんの声に、ゲームに見入っていた顔を上げた。 「隣にお前がいて、サッカーがあって」 「うん」 僕も思っていた。僕のサッカー人生を変えた、あの暑い日にも君が側にいた。 「ずっと一緒にいような」 教会で、誰にも見つからないように机の陰で手を繋いだ。そうして囁かれた言葉が、静かに蘇る。 「そうありたいね」 青い空、白と黒のボールに、隣の君。人目を忍んで握られた手を、思いを込めて握り返した。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 翼くんの結婚式の日を。 もっと長くなる予定でしたが、携帯ではこれが精一杯。 それにしても、ワールドユース編の源岬って、ミスター流血の地位を奪い合っているようにしか・・・。読んでいる方が痛い。
拍手お礼: さくら様。いつもありがとうございます。PCが開きません。リカバリしてからお返事させて頂きます。
拍手のみの方もありがとうございます。心から感謝しております。
from past log<2009.1.29>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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