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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
お題:「自分でやれる」
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

本日も xxx-titlesさまよりお題をお借りしています。 お題一覧はこちら

GOLDEN-23のナイジェリア戦の話です。

 派手に切った額から血が流れている。まるで、小学生時代の決勝戦だと思った。あの時は岬はスイーパーまで下がり、ゴールを守り切ってくれた。自ゴールで倒れている岬を抱き起こし、喜び合ったことは、鮮烈な思い出だ。
 今回は、違う。岬は敵ゴールで血を流しながら、一人で立ち上がった。本当は迎えに行ってやりたい。苦しかった戦いと、唇を噛み締める岬の顔を思い出して早く抱きしめて、隠してやりたいのに。

「まだ同点。再開しないと」
遠目にも分かる血だらけの顔で、再開しようとする岬だったが、時間はない。無常なタイムアップの笛に、その場に倒れた岬の許に駆け寄ろうとして、また、一番遠いことに気付く。
 満場の岬コールの中、目だけを光らせたまま倒れている岬を、見る。

 こんなプレッシャーの中、戦い切ったお前は強くなった。

 でも、すべて自分でやれる、なんて思わなくて良いんだ。

 オリンピックアジア代表予選に向けての強化試合ナイジェリア戦、1点ビハインドでの局面で、俺からのパスを受け取った岬は、日向ばりの強行突破を見せ、敵DFの中に突っ込み、同点ゴールを奪い取った。パスを受け取った瞬間に、猛々しく吠えた岬に、驚きはしたが、直前にどうやらオチャドの挑発を受けたらしい、と聞き、納得した。

「フランス語でよく分からなかったけど・・・翼さんの名前が出てました」
岬が念の為医務室に運ばれている間に、近くにいた佐野に尋ねた。
「そうか、ありがとう」
「・・・岬くんは翼くんのことになると、度を失うね」
「全部自分で背負おうとするのはあいつの悪い癖だ」
松山と三杉と、廊下の前で話した。佐野は俺達を見上げて、唇を噛む。
「岬さん、一人で背負いすぎですよ。ただでさえ、足が」
「ストップ。後は僕たちに任せて。君は戻っていいよ」
言いかけた佐野の口を三杉が押さえた。足のことは、誰もが触れない禁忌事項となっている。この場合でもそのルールは守られるべきだった。
「岬、入るぞ」
ノックして入ると、額に大きな絆創膏を付けられた岬が、ベッドに座ったまま顔を上げた。派手な出血の割りに、傷はたいしたことはなさそうで、少し安心した。
「岬、大丈夫か?」
「岬くん、痛まない?」
相変わらず過保護な二人に、岬が静かに微笑む。試合中の鬼気迫る顔とは打って変わった笑顔に、二人が息をつくのが分かる。
「うん、もう大丈夫。・・・僕のことは良いから、みんなのところへ戻ってよ。二人がいなきゃ、みんな不安がるよ」
「そうしろよ。岬は俺が連れて帰るから」
「ああ。若林頼む」
「じゃあ、お大事に。お先に失礼するよ」
名残惜しそうに、何度も振り返る二人に小さく手を振ると、岬は俺を見た。
「・・・みっともなかったね。僕」
「ああ、そうだな」
青ざめた顔で微笑む岬に、ベッド脇の椅子に腰掛けた。
「それでも、お前にパスして良かったよ。お前なら決めてくれると信じてたぜ」
オチャドに何を言われたのかは分からない。ただ、退場する新田を見送る岬の背中が、尋常ではなかった。小学校時代から見てきた背中に、闘志が溢れていた。
「ありがとう。僕を信じてくれて」
「当たり前だろ。お前が頼りになるのは、俺が一番よく知っている」
岬は体格の割にはスタミナがある。後半に弱い選手の多い全日本の中で、後半のあと数分に奇跡を起こす岬の背中には、きっと羽が生えているのだと噂になったことがある。
「・・・ただ、お前が吠えたのには驚いたけどな」
「あはは」
軽い笑い声と共に、岬が視線を向けてきた。たぶん、そうだろうと思っていた。俺は立ち上がると、座ったままの岬を抱き締めた。
「悔しいなら、泣けよ」
怪我を気遣いながらもぎゅっと岬の頭を抱える。岬は声も出さずに、ただ肩を震わせた。
「何を、言われた?」
顔を上げようとはしない岬の頭を撫でながら、尋ねる。岬の高いプライドが答えるのを拒むことは分かっていたが、聞いてやらなければ、前に進めないだろう。
「翼くんと比較されっぱなしの自分が嫌になったよ」
「しょうがないさ。お前はまだ日本にいるんだから」
まだ、だ。お前が世界に出れば、比較されなくなるのもすぐだ。タイプの違うプレーヤーを比較するバカばかりではない。
「それよりも、お前が反省すべきは周りが見えてなかったことだろう?」
岬ほどチームの状況を判断する能力の高い選手も珍しい。だから、翼だけではなく他の選手とも呼吸を合わせられる。
「うん、そうだね。それと、ごめんね、僕が頼りないばかりに君に手伝ってもらわないといけない」
「・・・お前のチームじゃなくても、助けに来たさ」
俺が、チームとトラブったまま参戦してきたことを、岬は未だに辛く思っているらしい。シーズン途中での移籍の権利を放棄してのことだから、気に病んでくれるのはよく分かるが、自分が決めたことだ。
「若林くんはばかだ。移籍のチャンスを棒に振って・・・」
「俺だって、戦いたいんだから、仕方ない」
チームに残っていても、ずっと試合には出られなかった。監督の不信を買った俺は外国人枠から追い出されたのだから。それよりは、お前を助けてやりたいと思った。一緒に戦いたいと思った。
 まだ俺のジャンパーに顔を埋めている岬を引き離した。涙の残ったままの目元を拭ってやる。
「だから、お前は何も背負わなくて良いんだ。俺のことも、チームのことも」
「ありがとう、若林くん」
俺の嘘も、きっと岬は分かっている。微笑んだ岬をもう一度腕に収めて、髪を梳いた。
「その辺り、まだ血が残ってるから、触っちゃダメ」
怖いことをさらりと言った岬の顔はもういつもの笑顔だ。
「でも、中央突破した時はちょっと格好良かったぜ」
「そう?」
「格好良すぎて、あんな調子で喧嘩された日には・・・ってぞっとした」
それでも、あんな情けない顔をされるよりはずっと良い。苦しそうに微笑まれるよりは。俺の気持ちを察したらしく、俺の手につかまりながら立ち上がった岬は、元気よく微笑んで手を伸ばす。
「じゃあ、怒らせないでね。・・・自分を大事にして」
握った手は思ったより力強くて、俺は安心して従った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
ナイジェリア戦です。もう、この話は1ヶ月寝かせました。無意味に。
辛くて書けなかったのです。でも、これも3M入れたら、すらすらと。
それにしても、若林くんの移籍話はどうなったんだろう。
ミュンヘンって外国人枠いっぱいいっぱいじゃないの?
(と言っても、今は計算の仕方が変わっていたはず)

from past log<2009.1.28>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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