※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 特に今回は好みがあると思いますので、合わない方はお戻り下さい。
結婚式話。早苗ちゃんサイドで腐っています。 
教会での挙式の後はガーデンパーティー。私達が若いから、披露宴をやるのも生意気だと思う、と言ったところ、翼くんのご両親が、ガーデンパーティーを提案してくれた。よく食べるサッカー選手だらけなのだから、何も食べさせずに帰すのは可哀想だし、立食形式で軽食と飲み物で、でも量だけはたくさん出そうというアイデアに、うきうきした。
翼くんと二人で参列者に挨拶をしてまわった。三杉くんと一緒に来ていた弥生ちゃんには先を越されたと恨み言を言われ、久美ちゃんにはわあわあ泣かれた。ゆかりと石崎くんには、二人してばんばんと背中を叩かれた。(本当に痛かった) そして、最後に立ち寄ったのが、まだ足が完全でない岬くんが座る長椅子だった。少女マンガに出て来そうな岬くんは、タキシードにベスト、クロスタイといういでたちで、受付してくれていたゆかりの言葉通りのおしゃれぶりだった。私達が近付くと、岬くんの隣にいた若林くんが手を貸し、岬くんは立ち上がった。 「中沢さん、翼くん、おめでとう」 あでやかな花束と一緒に岬くんがくれたのは、(やはりと言うか何と言うか)、サッカーボールだった。 「当然、参列してもらわないとね」 サッカーボールを受け取ると、翼くんは指先でまわしてみる。多彩な色の大小様々な文字。 「早苗ちゃん宛てばっかりじゃないか」 いかにも不満そうな翼くんの言葉に、岬くんはくすくすと笑う。 「僕はちゃんと二人宛に書いたよ」 岬くんならそうだと思う。決してこんな時にふざける人ではない。私達二人とも、彼が大好きだった。 「若林くんもだよね?」 岬くんの隣に立つ若林くんが頷く。長椅子が少し離れているせいで、いつもなら人に囲まれている二人が、こうひっそりとしているとは思わなくて、立食にしなければ良かった、と少し悔やんでしまった。 「若林くん、何かいかついね」 ダブルのブラックスーツに、ネクタイを堅苦しく結んだ若林くんは、翼くんの言う通りにとてもいかつい。(笑ったらいけないのは分かっているんだけど) 「岬くんは可愛いー」 新婦の前で、平気で友達に抱き付く新郎にむっとしたところで、抱き付かれている岬くんと目が合った。それが岬くんでなければ、私は許さなかったかも知れない。こんな細い身体で、高校3年間とワールドユースと、悲壮に戦い続けた岬くんは、好き、ではないが、尊敬できる友人だった。(でも、私は翼くんをにらんだ) 「こら、翼。岬を支えてる俺の身にもなってくれ」 若林くんはそう言うと、翼くんを引き離してから、私の方に近付いて来た。 「要らない、と聞いていたんだが。おめでとう」 差し出されたのは結婚祝いで、私は翼くんを預かることの重さを思い知らされる。 「中沢さんを幸せにしてね」 「うん。絶対に幸せにする」 二人に約束してくれた翼くんに、ゆるみっぱなしの涙腺はもはや限界だった。
「おっ、翼、それ、良いだろ?」 テーブルに戻りざまに、石崎くんが駆け寄ってきた。翼くんのサッカーボールに、周りも反応する。 「日向は何て書いたんだよ」 「あっ、それ俺も知りたい」 「っるせえ、たいしたことじゃねえ」 「日向さん、こんなめでたい日くらい、落ち着いてくださいよ」 翼くんがサッカーボールを持っているだけで、構いたくなる人ばかりらしい。もう、いやになっちゃう。呆れながら、ゆかりのところに行った頃には、もうミニゲームが始まっていた。南葛OBvs連合軍、と弥生ちゃんから聞いて、見物にちょうど良い長椅子の方に向かう。岬くん達の長椅子から少し離れた並びの椅子に座った。 長椅子の先客は、二人で並んで南葛チームを応援していた。主力の二人を欠く以上、我が南葛の勝利は遠い。それほどの負傷で辛い二人がこうして祝福に来てくれたのは嬉しかった。
と、ゲームを応援している私をゆかりがつつく。 「岬くん、おしゃれだったでしょ?」 「うん」 「私、石崎の奴が恥ずかしくないように、結構必死で礼服調べたのよね。だから、受付で相当チェックしちゃったのよ」 なんだかんだ言っても、ゆかりのところは仲が良い。 「そうね。私も淳に蝶ネクタイじゃ決まりすぎるから、リボンタイ勧めたのよね」 「あと、若島津さんが素敵でしたよ。井沢先輩は似合ってましたけど、あの色は軽すぎると思いました」 のろけたっぷりの弥生ちゃんに、意外に辛口な久美ちゃん評に苦笑しながら、ゲームを観戦していると、こちらに気付いた岬くん達が近寄って来た。 「今日はあねごなし?」 「ああこないだもすさまじい応援だったもんな」 ・・・確かに、ワールドユースの時の応援スタイルを思い出せば、恥ずかしくない訳ではないけれど、こうして言われると恥ずかしすぎる。 「そんな訳ないでしょ!もう二人とも冗談きついわよ」 ・・・これだから、私は未だにあねごのあだ名がなくならないのだ。気を取り直して、二人に頭を下げる。 「二人ともこれからも翼くんをよろしくね」 私には、フィールドの翼くんを応援してあげるしかできない。その前の瞬間までサポートをしても、フィールドに上がってしまった翼くんに対しては何も。本当はここに集まってくれたみんなに頭を下げてまわりたい、けれど。昔から知っている二人は、その気持ちも分かってくれていると思った。 「こちらこそ翼くんをよろしく。スーパーマネージャー」 岬くんの優しい声に、岬くんに抱きつきたくなり、踏み止まった。(・・・翼くんのことを言えない!)
泣きそうな私に微笑んで、二人は椅子に戻って行った。その姿を眺めて、ゆかりが耳打ちしてくる。 「ねえ、早苗。若林くんってどういう人?」 「難しい質問ね・・・翼くんの永遠のライバルってとこかな」 「翼くんの永遠のパートナーとライバルと。不思議な関係よね」 逞しく大きな背中と、ほっそりとしたしなやかな背中。対照的に見える二人に、翼くんがどれほど助けられてきたか、私は知っている。 「・・・それにしても、仲良すぎない?」 ゆかりの表情に、その言葉の意図がようやく分かった私は、顔がみるみる赤くなるのを感じた。胸がきゅんきゅんした。二人をよく知るだけに、簡単に想像できてしまう。たくましい腕の中で花のように微笑む岬くんの白い指が、背中にまわされる光景が思い浮かんだ。さらさらの髪が、ごつごつした指で乱されて。きゃあ。 岬くんは私達二人にとってアイドルのような存在だった。私達は好きな人は別にいても、彼の写真を取り置いたりしていた。彼はとてもきれいな人だった。容貌だけじゃなくて、潔さや心まできれいだった。浮いた噂一つないエースに取次ぎを頼む女の子は多かったけれど、ずっとシャットアウトしてきた。 「あっ」 ゆかりが声を上げた。岬くんが膝に広げていたハンカチが滑り落ちる。それが地面に落ちる前に、若林くんが受け止めると、岬くんの膝に置いた。 「ありがとう」 「どう致しまして」 腰を屈めてハンカチを拾った若林くんを、岬くんは優美な笑顔でねぎらった。その様子に、ゆかりが息を飲む。 「ねえ、早苗」 「何?」 「私達のアイドルをその辺の女の子にとられるくらいなら、と思うのよ、私」 たとえば久美ちゃんとか。一段と声を落とすゆかりに、側に座る久美ちゃんを見た。悪い子では決してない。何かに取り憑かれたように占いに執着していた頃は本当に怖くて、ゆかりの言うのも分からないでもない。岬くんは結婚した今の私にとっても、やはりアイドルなんだもの。 「まあ、大事にしてくれそうね」 長椅子の端に置かれたサンドイッチは、バイキング形式になっているテーブルから若林くんが調達してきていた。といっても、滝くんを走らせて。さすがに素早かった滝くんには笑ったけれど。 誇らしげに手渡した若林くんと、嬉しそうに受け取った岬くんの笑顔を思い出して、私はため息をついた。 「その代わり、泣かせたりしたら承知しないわよ」 やっかいな監視団ができたとは知らずに二人は楽しそうに笑い合っている。ゆかりの懸念は問題なさそうね、と野次馬をひっこめ、私達はゲームに集中した。
(おわり)
・・・好み分かれると思いましたので、こっそりと。 南葛高校に、岬くんファンじゃない女の子っているんでしょうか。 一番は岬くんじゃなかったとしても、岬くんを応援したくならない女の子なんて。 という視点から書いてみました。 ミニゲーム書いた時点で、新婦サイドは暇でしょうし。 それで、あまり突っ込まないでいただけると助かります。
from past log<2009.1.26>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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