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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
『寂しい、寂しい、嬉しい』
リンク先のAlnascharさまより、頂いて参りました。

フリー配布ですが、ちゃんと許可も頂きました。
私には書けない大人の味わい!
何度読み返しても、風味があるというか。
雰囲気があるというか。
香水愛用、ですよ、この若林くんはっ!
『寂しい、寂しい、嬉しい』

ふわりとほんの微かに漂う香りが、君の残り香だと頭よりも速く、もっと体の、本能的な部分が理解して思わず苦笑する。

見送って別れたばかりなのに今どこら辺を飛んでいるのか、どうでも良い事が巡る頭。

そう思う端から、出発便の時刻を思い出して計算しているから手に負えない。

全てはまだ残っているこのフレグランスのせいかと思っても、少し乾いた部屋の空気を換気してこの香りを手離す気にはなれなくて。

本当に困ったものだと思う自分自身が、酷く好ましく思えて、諦めにも似たため息が出る。


―――降参


勝ちも負けも問題ではないのに、心の中で両手を挙げてみる。

これではまるで西部劇のかませ犬のようではないか、自分の想像に自分でケチを付けて声を出さずに笑う。

出来ればヒーローとは行かずとも、せめて悪の親玉くらいにはなりたい。


『親玉って・・・・・岬はどちらかと言うとヒーローをヒロインの所まで先導する馬だろ。』


軽口めいた声が聞こえた気がして、成る程と納得する。


そうかも知れない。さしずめヒーローは翼君でヒロインはボールかな。


じゃあ、君はヒーローの相方だ。頼りになるけれど少し抜けている、でもやっぱりヒーローがピンチの時には決まって現れる―――そんな存在。


僕は嘶いて君を歓迎しよう。

少しでも役に立てるなら、銃口の前で暴れてやってもいい。



例え僕が、ピッチに立てなくなっても君がゴールにいてくれさえすれば、ヒーローが・・・・・――翼君が負ける事はない。


そこではたと気づく。


いつの間にかごちゃごちゃな想像。


『不器用だな、切り替えろよ。』


また頭に響く声は笑いを含んで。


でも、見渡しても声の主は居ない。


とっくに雲の上だとわかっているのに。



そうなんだ。



「僕、寂しいんだ。」



独り言だと解っても、声に出した言葉が、耳に届いてすんなり馴染む。


いつの間にか2人で居ることに慣れてしまっていた。


ただ数日のオフに日本に帰って来ただけの間なのに。ただ日常に戻るだけなのに。


次から次と飛躍する思考が、混乱している証拠だと思い知らされる。


口に出して始めて気づく単純な感傷。


本当に不器用すぎるのかもしれない。



また君に会いたいな。
次は僕から会いに行こう。



素直にそう思えて、不気味だと思いながらも口の端が上がる。


認めてしまえば、なぜか気持ちと一緒に軽くなる体。



走りたいかも。




無性に沸き上がる衝動。

それは、多分、・・・・きっと―――



次に会う時も、翼君に、そして君に、堂々と並べるように、置いて行かれないように。



せめてヒロインとヒーローが帰り道に徒歩で帰るなんてないように。



――そんな願望から。




少しくたびれたランニングシューズを手に取って、部屋を出る。



微かに残る香りが後押するように鼻を掠めた。


end


from past log<2009.1.22>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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