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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
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全部、分かってる
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。



 どうしてハンブルクまで来たか、という話になった時、岬は少し言い淀んだように見えた。俺は岬の目を覗き込む。陽光に透けて、いっそう茶色く見える髪を揺らし、岬はもの言いたげな眼差しで俺を見返した。
「分かるぜ。…翼のことが気になってたんだろ?」

 岬が引っ越して行った時、翼は目に見えて落ち込んでいた。全国大会で優勝すればロベルトとブラジルに行く、それは翼の目標であり原動力になっていた。そのロベルトは翼をおいてブラジルに帰り、翼は目に見えて落ち込んでいた。
 そんな状態の翼を残して引っ越して行く岬は、さぞ辛かったと思う。そして、後ろめたかっただろう。もし日本の誰かと文通していたとしても、岬の立場では翼のことは聞きにくい。
「…うん、若林くんなら分かってくれると思ってた」
岬はそう言うと、優しく微笑んだ。

 翼と岬が走る姿を、遥か後ろから見ていた。一対の白い稲妻のように駆ける二人の姿に、羨望を感じなかったことはない。同じチームになってからは、得意な気持ちも起こったが、それでも自分のプレイを深く理解して合わせてくれる相手がいることは羨ましかった。南葛から離れドイツまで来て、羨望は随分薄れはしたものの、黄金コンビは俺には特別だった。

「ああ。俺はお前達のファンだからな。何でも分かるさ」
俺の言葉に、岬は大きな目を瞬きさせて、俺を見つめた。
「本当に?」
きれいな目だと思った。柔らかい光が宿る瞳に吸い込まれるような気がして、思わず息を飲んだ。
 人生初めてのライバルで親友である翼が特別であるように、岬も特別な存在だ。黄金コンビの片割れというだけでなく、岬は見ていて気持ち良いプレイをする選手だった。MFらしくフィールド全体、試合全体を把握しながらも、心のこもったパスを相手を見て送ることができた。そして、俺のプレイを理解してくれる初めての協力者だった。
 岬は誰とでも組める、それは分かっていても、それでも惹かれる気持ちを抑えられなかった。それは、今まで感じたことのない思いだった。
「じゃあ、これも知ってた?」
岬は、ベンチの背もたれから背中を浮かせた。少しだけ前に体を倒して、俺を覗き込むように見上げる。
「若林くんだから会いに来たんだよ」
微笑む岬に、胸が締め付けられるように痛くなった。岬にすれば何気ない言葉だろうが、ひどく動揺した。思わず目を逸らして下を向くと、岬がベンチに手を置いているのに気付いた。白くてきれいな指だと思った。
「岬」
分かっていたつもりだった。だが、分からなくなった。ここまで来た岬の真意も、目の前の岬の手を掴んで良いのかも。
「…本気にするぞ」
「良いよ。僕のこと、全部分かって欲しいんだ」
岬のことは分かっているつもりだった。深い孤独も、不思議な程の明るさも、悲しい優しさも。でも、まだまだだった。

 もっと知りたい。

 触れた手は思ったよりも柔らかかった。掴んだ手首は細くて、簡単に手繰り寄せられた。
「ずっと好きだった」
「うん、知ってた」
夕陽の色を帯びた空の下、抱き寄せた岬の声は静かだった。

(終わり)

拍手ありがとうございます。
アニメでスマホ持ちなのに翼くんに連絡取らない岬くん、グラジャンでGC好きを遺憾無く発揮する若林くんを見ていたら、こんな話になりました。
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