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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
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格差社会
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「今日集まってもらったのは、他でもない」
いきなり切り出した日向の迫力に、石崎は隣に座る岬へすがるような視線を送った。

 高校サッカー界の2大勢力と名高い南葛と東邦だが、それぞれの中心である日向と岬が昔同じチームにいて、仲が良かったのは、この世代では有名な話だ。岬が日向のことを「小次郎」と呼び捨てにしていることも。高校生になった今も華奢で、可愛い笑顔に定評のある岬が、高校サッカー界の「ラスボス」扱いされている日向を呼び捨てにしているのだから、一度でも目にした者には忘れがたい光景だ。
「俺達は、作中の格差を許さない会だ」
大きくぶちまけた日向に、石崎が茶を吹き出しそうになりながら、盛大に異議を唱える。
「そんなことで呼び出したのかよ!?」
訝しげに隣の岬を覗き込めば、岬も大きく頷いた。
「僕も初耳だよ。翼くんの思い出を語る会かと思ってたのに」
全国大会で南葛メンバーに会う度、ブラジルに行った翼の消息を尋ねる日向だが、今回はそうではないらしい。顔を真っ赤にして「そんな訳あるかァ!」と猛虎と呼ばれるだけの勢いで一閃した。

「その翼だ。ブラジルに留学する前も、裕福な家で苦労知らずに暮らしてただろ?」
「うん、それはそうだね」
岬は頷き、それから何かひらめいた様子で、目をぱちぱちさせた。
「格差ってそういうこと?」
「そうだ。俺達貧乏人が苦労しながらサッカーしている一方、恵まれた奴らは…」
「僕の家、別に貧乏じゃないけど」
日向の熱弁を遮り、岬は微笑んだ。この微笑みこそがくせ者だと知っている二人は黙り込み、岬の反論を静聴する。
「引っ越し続きなだけで、父さんの絵は売れているし」
「お前、よく夕飯作ってたじゃねえか。俺の知る限りじゃ、そんなのは俺とお前くらいだぜ」
「それは家の手伝いだよ。それも自分の食べる分だけだし」
いかにも心外そうに言った後、岬はふと真顔になった。

「格差って言うから、恋愛格差かと思ったよ」
岬の真顔は、笑顔よりも更に怖い。更に言葉の内容は凶器そのものだった。「俺ん家も大したことはないが、貧乏じゃねえ」と反論するきっかけを待っていた石崎も、黙り込んだ。
「翼くんも三杉くんも松山も、イチャイチャし過ぎだよね」
「岬、てめえフランスに彼女がいるからって…」
「いや、友達だよ」
軽くいなして、岬はにこにこと笑う。
 この笑顔には、結局誰も抗うことができないのだ。
「小次郎にも、若島津がいるじゃない。タケシもいるし」
「その二人をどうしろとぉ~?」
地の底からはい上がるような唸り声で、日向は岬に尋ねる。丸くなったとはいえ、猛虎と呼ばれる男、日向小次郎だが、相変わらず岬には弱い。この局面で怒鳴ることができない日向に、石崎は内心同情した。
「二人とも、小次郎のこと好き過ぎるから、普通の女の子は寄って来ないんじゃない?」
「うっ…」
正鵠を射るどころかえぐる勢いの岬に、日向は呻いた。しかも、岬は彼女ではないと否定しているが、女友達がいることは確かで、この場では強者である。
「…てめぇこそ、若林とデートしてたよな」
日向が思いついたのは、別冊での若林と岬の試合観戦だった。反町から「これってデートですよね」と言われて、何故かムカついた日向だが、今岬に反論する材料としては他に有効な手が思いつかなかった。
「若林と言えば、小学生の決勝戦でも抱き合ってよな」
日向が連続技を繰り出す間、岬は黙っていた。遠目からでもまつ毛が長く特徴的な大きな目で日向を見つめ、日向の発言が終わってから、静かに口を開いた。
「そうか、そんな風に見えたんだね」
初対面の相手を引き付ける爽やかな笑顔で、岬は言った。優しい声に見合った口調だった。だが、日向は背中に冷たいものが伝うのを感じ、もうこのことに触れるのはやめようと思った。

 そして会はうやむやのままお開きとなり、日向と別れての帰り道、石崎は気付いたのだった。
 …岬、否定してなくね!?
 だが、これまでうまく立ち回ってきた石崎は、ちゃんと弁えていた。浮かんだ疑問を胸の奥に沈め、無事なかったことにしたのだった。

(終わり)

拍手ありがとうございます。
衝動で書きました。
疲れ気味のせいか、暴走話ばかり書いてしまっています。
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