※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「小次郎、若島津、久しぶり」 休憩中に歩み寄って来た岬に、日向と若島津は顔を上げた。最初に岬を歓迎したのが南葛メンバー中心だったため、二人は入って行き辛かったのである。もちろん、それでも輪の中心にきっちり入り込んでいた松山のような存在もいたけれど。 「お、おう」 「ああ、久しぶりだな」 「相変わらず、仲良いね」 友好ムードの挨拶の後、更ににこやかに言った岬に、若島津は一瞬持っていたタオルを取り落としかけた。笑ってはいても気を張っていて、どこか臆病で本心を隠していたとは思えない、優しい雰囲気を漂わせる岬。 「嬉しいな。みんなと一緒にサッカーできるなんて」 明るく笑うと、岬は二人に向き合う。 「優勝おめでとう」 岬が微笑む度に、若島津は胸騒ぎがしてならなかった。
「岬には何も言わないんですね」 夕食を食べ終わり、部屋に戻った若島津が呟く。 「ああ。翼の出場認めたんだから、あいつくらい増えたって問題ないだろ?それに、あいつは怒らすとうるせえからな」 若林と殴り合いした日向が岬の小言くらいでめげるというのも奇妙な話だが、何だか癪に障り、若島津は日向を見た。 「新田が言ってましたよ。あんたと松山はえこひいきが過ぎるって」 「本当にあいつは生意気だな。一回しめてやんねえと」 さして気にした様子もなく言うと、日向は息をついた。偶然耳にした若林と翼の会話が、頭の中に澱のように残っている。若島津が、実力で選ばれたいのだと必死で練習をしている姿を知っているだけに、絶対に彼だけには言えない。 「練習、してくる」 言い置いて部屋を出た日向の横顔を、若島津はもの言いたげな表情で見送った。
日向が部屋を出ると、ちょうど岬が家に帰るところだった。 「岬、こんな遅くに大丈夫か」 「みんなにちょっと引き止められちゃって・・・大丈夫だよ、慣れているから」 日向から見ても、岬は華奢で可愛い顔をしている。それが一人で夜道を歩くというのは、さすがにまずいと思う。送る、と言う日向の心配顔に、岬もさすがに抗いはしなかった。 「じゃあ、そうしてもらおうかな」
肩を並べて歩くと、さすがに身長差を意識して、岬は少し不満そうにする。それでも、腕を組み偉そうにしながらも、見知らぬパリが珍しくてきょろきょろ目だけ動かす日向に、岬はつられて笑う。 「小次郎成長したんだね。南葛のみんなと話していたら、小次郎とプレーするのが嬉しいって言ってたよ」 慣れた様子で歩く、どこの町並みにも不思議に馴染む岬に、日向は少し優しい目を向けた。こうして笑顔で優しいのが岬の本質だと思うのに、自分の思い出す岬は勝気な顔をして「小次郎」と日向を叱りつける。 「お前さ、若林と口きかないけど、何か知ってるのか?」 「みんなが黙ってることをわざわざ掘り返したりはしないよ、僕は」 今日の練習の時も、若林はハブ扱いだった。真意を聞いてしまった日向としては、複雑な思いではあるものの、岬がそれを何とも言わないのも気にかかっていた。そして、岬の答えに、岬が事情を知っていることを悟る。 「俺、翼と若林が話しているのを聞いちまってさ」 「そう・・・じゃあ、辛いよね」 日向が今日の練習で若林を口を極めてなじるのを耳にしていた。それでも急に態度を変える訳にはいかないこともよく分かっている。 「ああ。他の奴には話せねえから、お前が聞いてくれるだけでも助かるぜ」 「うん、いつでも聞くよ。でもね」 岬は優しく頷くと、一瞬目を細めて鋭い視線を向けた。 「小次郎、チームのことを心配しているのは君だけじゃないって分かった?」 岬に言われたのでなければ、反発してしまうに違いない。機を見て自分の頭を押さえつけながら、微笑んでみせる岬に、日向は苦笑する。日向には噛み付く岬と、岬には噛まれる自分と。 「それと、若島津には言っちゃだめだよ。・・・ただでさえ辛そうなんだから」 わざわざ言った岬に、日向は先程様子のおかしかった若島津を思い出した。いつでも何もかも打ち明けてきた相手が、一番遠い。
(つづく)
(7)へ
拍手ありがとうございます。 この合宿入りの時に、反発しそうなのは新田くんで、それをこぼす相手は若島津くんのような気がします。若島津くんは誰よりも公平な人だと思われていそう。 それと、若林くんが参加したことで一番不利益をこうむっていると思われていますから。 岬くんに対してどう、ではないでしょうけれど。 あと、日向くんのこの時の心情を想像すると、他に相談できないような気がして・・・。 ここから、暗くなりそうですけど、まだ続けます。
拍手お礼: さくら様。いつもありがとうございます。 こちらこそ色々お気遣い、励まし頂きまして、本当にありがとうございました。 詳しいことは、また。
M☆様。いつもありがとうございます。 今回あまり楽しそうでなくて、すみません・・・。何とか持ち直したいと思います。
拍手のみの方もありがとうございました。そのお気持ちに感謝します。
from past log<2009.1.22>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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